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日独ハーフの視点

「#日本でブラックフエイス止めて」

年末にニッポンのある番組が「顔を黒く塗りたくったお笑い芸人」をテレビで放送し、これが黒人を馬鹿にする「#ブラックフェイス」だとして各方面で批難を浴びています。

最初に声を上げたのはBaye McNeilさんという日本在住のアメリカ人男性。Twitterで「#日本でブラックフエイス止めて」というハッシュタグで問題点を書き込んでいます。

この問題について報じたBBCの動画はこちら、そしてBBCの記事はこちら。

アメリカやヨーロッパでは「ブラックフェイス」は絶対にしてはいけないことという共通認識があるのですが、それは歴史に由来するところが大きいです。分かりやすく書かれたブログを見つけましたので、ご参考までにご覧ください。

「日本にはアメリカやヨーロッパのように『白人が黒人を差別してきた』というような歴史はないのだから、あの番組で顔を黒く塗ったのは差別に当たらない」という声も日本にはあるようですが、当事者の黒人が差別されていると感じる番組制作はやはりやめるべきだと思います。マイノリティーに属す人間が「差別されていると感じる」と声を上げたことに対し、マイノリティーではない、この国において「多数派」の人々(つまりは日本人)が一部とはいえ「それは差別ではない」と発言すること自体が、差別問題を考える時に構造としておかしいです。だいたいブラックフェイスをやらなくたって、日本のお笑い番組は成り立つのですから、素直にやめてあげればよいのではないかと思います。

ドイツにも私が子供時代を過ごした70年代や80年代には、黒人が嫌な気持ちになるような遊びや呼び方などが多数残っていました。たとえばお菓子の名前でNegerküsse(和訳:「黒人キッス」)と呼ばれているものがありました。マシュマロの外側が茶色のチョコレートで包まれているお菓子なのですが、抗議の声が上がっても長らく頑固な人たちが「差別する意図はない」とその呼び方が定着していましたが、その後めでたく呼び名は変わり、現在このお菓子はSchokokuss(和訳:チョコキッス)またはSchaumkuss(和訳:マシュマロキッス)と呼ばれています。嫌な思いをする人が減り、お菓子じたいはもちろんなくなっていないし、結果みんなハッピーです。

ドイツで過ごした子供時代に近所の子供会でよく遊んでいた「鬼ごっこ」の遊びがあったのですが、この名前が”Wer hat Angst vorm schwarzen Mann?”(和訳:「黒い男が怖い人!」)でした。鬼となった人が、他の子供全員に”Wer hat Angst vorm schwarzen Mann?” (和訳:「黒い男が怖い人!」)と叫び、他の子達が全員”Niemand!”(和訳:「誰も怖くないよ!」)と叫び返す。で、鬼が”Wenn er aber kommt?”(和訳:「それでも黒い男が来たら?」)と聞き返し、全員が“Dann laufen wir davon!”(和訳:「そうしたら皆で逃げる!」)と叫びワーッと逃げていく遊びです。

5歳児だった私の「黒い男」のイメージは黒人ではなく、黒いストッキングのようなものに頭と体もすっぽり覆われている目しか出ていないような人だったのですが、それはさておき。ドイツでも諸説あるのですが、この「黒い男」の原点というか正体は、Schornsteigerfeger(煙突掃除夫)だったという説もあれば、Henker(死刑執行人)だったいう説、そしてPestkranker(ペストを患っている人)だという説もあり意見は分かれるのですが、「黒い男」が「黒人」であったという説も完全に否定はできないため、そして何よりも現在のドイツには黒人の子供も多く幼稚園や学校に通っていることから、別の鬼ごっこはやっても、冒頭のかけ声(「黒い男が怖い人!」)のある「鬼ごっこ」をさせる先生は現在のドイツにはまずいません。これでドイツの文化がなくなった、なんて思いませんし、人が嫌な思いをせずに済むのならそれでよいと思います。

年末に放送された番組「ガキの使い!大晦日年越しSP絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」(あ、言っちゃった)について、年が明けてから今まで様々な議論されていたブラックフェイス問題ですが、ブラックフェイスをやめたって日本のお笑いは成り立つ。だったら、気持ちよくスパッとブラックフェイスはやめてあげてはいかがでしょうか。

サンドラ・ヘフェリン

著者紹介

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

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