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洗練されていないけどヒップな お気に入りの通り

誰かと話しているとき、よく「ベルリンで好きな場所はどこ?」とたずねます。その人に関して、たくさんのことが分かるし、知らなかった場所を教えてもらえるチャンスだからです。

そうすると反対に、私も好きな場所をきかれます。そんな時は、「ベルリンでは、ポツダム通りとビューロー通りが交差するあたり」と答えますが、しばしば驚いた反応がかえってきます。というのは、地元の人のあいだでは、この地区の評判は決して良いものではなく、長い間「危険エリア」とされていたからです。でも今、この界隈は大きく変化しています。だからこそ、魅力があると感じるのです。

このあたりの街並は、まるで建築史を見ているようです。かつては有名な建築だったのに、今は批判されるようになった建物や、一時は忘れられてまた人気になった、美しい建築などが並んでいます。同時に街で目立つのは、衣料品の低価格ブランドや、手軽なファストフードの店です。でもこれは、表面的な印象に過ぎません。建物の背後の歴史ある中庭には、著名なギャラリーや、ファッション界の人々が出入りする、トレンドに敏感なブティックがあります。街を行く人たちは、あらゆる社会層が混じりあい、出身国も様々です。

Mix aus Alt und Neubau     Potsdamer Strasse

Potsdamer Altbau siebziger Jahre Bau      Balkone an einem Bau aus den achziger Jahren

その中のハイライトは、ひときわ目立つパラセウムです。記念碑的な堂々たる建築で、その一部は、以前の防空壕の上に建てられています。そして、建物の下には道路が通っています。この住宅は、70年代に未来の団地として設計されましたが、その後、社会的な摩擦が生じるようになりました。そのため空き家が増え、90年代半ばには、取り壊しさえも検討されました。しかし、大規模な改修工事と住宅政策の変化で、今では2000人以上が住み、これまでにない人気を集める住宅となりました。どのサイズの住宅も、多くの人が入居待ちをしている状態です。それもよく分かります。住宅は日当たりが良く、最上階からはベルリン全体を見渡せるのです。

Palladium über ehemaligem Hochbunker und Straße         Pallaseum

Palladium Seitenansicht                 Palladium

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このすぐそばには、ブルーノ・パウルが設計した、新即物主義様式の建物があります。建物の構造が作り出す多くのアングルや、直線的なラインは、被写体としてたくさんのモチーフを提供してくれます。このため、ここに来るたびに、熱心に撮影をする趣味のカメラマンを見かけます。

Bruno Paul Kathreiner Haus

ポツダム通りを北に向かうと、いろいろな建築様式の建物が並んでいて、そのことが街の魅力になっています。通りの半ばあたり、劇場のすぐ横には、ベルリンで一番美しい中庭が隠れています。フレンツェ風のスタイルで作られたこの中庭は、騒がしい都会のオアシスです。

Florentinischer Hinterhof

通りの反対側にある建物の中庭も、行ってみる価値があります。グリュンダーツァイト(1870年代初頭の好景気に沸いた時代)のすばらしい建物があり、壁には葉巻の広告が残っています。この建物には、多くの著名な画廊が入っていて、毎年行われるギャラリー・ウイークエンドは、たくさんの人が集まります。ふだんは隠れていてわかりにくい画廊を見つけるには、いい機会です。

Hinterhof mit historischer Werbefläche

ファッション好きの人にも、いい場所があります。ベルリンに拠点を置くデザイナー、アンドレアス・ムルクディスが、新聞社が使っていた建物の中に、今では世界的に有名になった、コンセプト・ショップをオープンしました。

Andreas Murkudis            Ehemaliges Tagesspiegel Areal

この通りには、グルメスポットもあります。さきほど挙げた軽食の店のほか、数は多くないけれど、良いバーや、この町に昔からあるカフェ、レストランなどがあります。

この街の生活は変わっていくけれど、建物には過去の歴史が刻まれています。だから私にとって、この界隈はとても魅力的なのです。変化しているからこそ、来てみる価値があると思います。喧騒に身をまかせ、ゆっくりと通りを歩けば、新しい発見があります。

 Gründerzeitarchitektur        Avantgarde der Siebziger

 

        Hippe Designermarken eröffnen hier schon bald.

興味のある方は、このすぐ近くにある2つの建物の写真を見ることができます。
リノベーションされた50年代のガソリンスタンド (英語)
今は写真プロダクションに賃貸された、以前は住居だった場所  (英語)

著者紹介

Felix Sandberg

シュトゥットガルト近郊の田舎町育ち。15歳のときヴィジュアル表現の形として写真に目覚める。その後すぐに家具を初めて手作りする。大学時代をイエナで過ごし、その間にミュンヘン・ニューヨークなどにも立ち寄る。ミュンヘンでは特に建築に、そしてニューヨークでは日々デザインに没頭し、物の美しさへの情熱と美的感覚を養う。 その定義づけに関わらず、物の見た目・形そのものに興味があり、建築でも家具でも家電でも、外見こそが重要。その姿かたちから良い感覚が自分の中に沸いたとき、初めてそれが私にとってデザインとなり得る。 経営学を学んだ後、繊維業界でインターンおよび勤務経験あり。繊維商社では仕入れ・および販売部にて従事。今年の初めからは自らの情熱にすべてをささげている。

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