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アメリカからベルリンへ。ドラムと作曲の日々 青島主税さん

ベルリンといえば、音楽のイメージがある人は多いのではないでしょうか。街には数多くのコンサートホールやクラブ、イベントスペースがあり、音楽に触れるチャンスにあふれています。
当然ながら、音楽のプレイヤーたちも大勢集まっているのがベルリン。今回は、ベルリンでドラマー・作曲家として活動する青島主税(ちから)さんに、音楽を始めたきっかけや、ベルリンでの活動についてうかがいました。

■ドラムとの出会いは中学生のとき

お話をうかがったのは、青島さんが知人とシェアしているスタジオのなか。青島さんは、ここでメンバーと練習をしたり、ドラムの個人レッスンを行っています。
青島さんがドラムを始めたのは中学生のとき。友人と組んだバンドでドラムを担当したのがきっかけでした。ドラム教室に通い、レッスンを受けたそうです。

友人とシェアしているスタジオ

友人とシェアしているスタジオ

高校に進学しても音楽活動は続きました。青島さんが通った高校は、愛知県にある全寮制の黄柳野(つげの)高校という学校。それまでの学校生活で、「みんな同じ制服を着たりするのはなんか変だな」と感じていた青島さんは、先生のことをあだ名や「スタッフ」と呼ぶ黄柳野高校を知り、進学したそうです。
高校では軽音楽部ならぬ重音楽部に所属し、音楽に明け暮れる毎日。音楽を真剣にやろうと思い始めたのは、その頃からでした。

そして高校在学中に、ジャズで名高いアメリカのバークリー音楽院に入学を志望しましたが、書類選考で落選。しかしここであきらめず、東京にある提携校へ進み、音楽理論などをきっちりと学びました。

私はこれまでいろいろな人にインタビューをしてきて思うのですが、何か目的がある人は、ひとつの道がダメでも、ほかの道を見つけています。そして最終的に、自分が望む方向へと進んでいます。

青島さんも、そんな一人です。バークリー音楽院への最初の書類選考は通りませんでしたが、その後提携校での勉強、卒業後はプロドラマーのローディー(機材運びやセッティングを手伝う人)をしながらZANZOというバンドでも活動。このバンドで、アメリカの巨大プロモーションフェスティバルSXSWにも参加し、音楽経験を積んでいきました。
そして再びバークリーへ願書を出したところ、今度は書類選考に受かり、入学オーディションで奨学金を得た後、晴れて入学を許されたのです。

■アメリカで自分の音楽に開眼

バークリーに2度目のチャレンジをしたのは、それまでの音楽経験から、「何でも叩ける職人みたいなサイドマンとしてではなく、自分自身の表現を追求したい」と思ったから。
画家である父親から「自分しかできないことを表現するオリジナリティが大切」と聞いていた青島さんは、バークリーで自分の音楽を目指すことにしたのです。

アメリカでは、カルチャーショックの連続だったという青島さん。
「先生が、机に腰かけて授業したりして。でも授業はプロフェッショナルで、一流の先生ほど、先生と生徒が対等という印象でした。Terri Lyne Carrington、Dave Dicenso、Mark Walkerという一流ドラマーが先生だったんですが、すごいキャリアなのに、自分も生徒から教わっているという感じでした」

しかし、超一流の黒人ドラマーの演奏を日々目の当たりにし、そのリズム感と瞬発力のすごさに「同じ土俵では勝負できない」と思うように。自分のできることを求めて打ち込み音楽を始めたところ、自由に作れる面白さに夢中になりました。

「エレクトロミュージックをやるなら、ロンドンかベルリンだ」と思い、周囲の人に相談したところ、ベルリンの方が面白いし、生活しやすいという意見が返ってきたそうです。
「ロンドンは完成されているものでないと受け入れられないけど、ベルリンは違う。新しいものをやるなら、ベルリンの方がいいんじゃないか、と知人から聞きました」

スタジオでドラムの個人レッスンも行っています

スタジオでドラムの個人レッスンも行っています

この地下にスタジオがあります

この地下にスタジオがあります

■ベルリンで活動することのメリットと課題

ベルリンに来て最初の2ヵ月間は語学学校へ。その後路上で演奏していたところ、アルジェリア人のプレーヤーと知り合い、一緒に演奏するように。そこからほかのプレーヤーへとつながっていきました。

現在の活動は、大きく分けて3つ。1つはドラマーとしての活動です。自分のバンドはもちろん、数々のミュージシャンのサポートドラマーとしてライブで演奏したり、レコーディングに参加したりしています。

2つめは作曲活動。「ここに来てから、ベルリンっぽさが曲に入るようになった思います」と言うように、テクノ系の音楽も作るようになったそうです。
オリジナル曲は自身のソロプロジェクト、ベルリンで出会ったミュージシャンの友人やバークリー時代の友人とともにRingbell、Schlafwagenというバンド名で演奏。Ringbellはシンガーやトランペット、ピアノ、ギター、ベース、ドラムなどアコースティックな編成。Schlafwagenはコンピューターによる打ち込みとドラムもしくは電子ドラム、ギターという編成です。

そして3つめはドラム教室。ジャンルは不問で個人レッスンを行っており、新たな生徒を増やしたいとのこと。
このように、現在は7〜8個のプロジェクトを同時進行させているそうです。

青島さんの話を聞いていると、プロジェクトメンバーの顔ぶれは、とてもインターナショナル。ドイツに住んでいるからといって、ドイツ人とだけ活動しているわけではありません。むしろ、ドイツ以外の国籍の人のほうが多いかもしれません。
音楽を共通項にして、国籍を超えてミュージシャンとつながることができる。それはドイツでは、ベルリンだからこそできることなのかもしれません。

現在の課題はコラボレーションとコネクション。映像や絵、ダンスとのコラボレーションなど、ここでしか出来ない実験的な事もしていきたいそうです。そしてベルリンを生活のベースにしながら、他都市や他国での活動も増やすなど、今後について計画中です。

青島主税さんHP:
http://chikaraaoshima.com/

文・写真/ベルリン在住ライター 久保田由希
2002年よりベルリン在住。ドイツ・ベルリンのライフスタイル分野に関する著書多数。主な著書に『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『ベルリンのカフェスタイル』(河出書房新社)、『レトロミックス・ライフ』(グラフィック社)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)など。近著に『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)。http://www.kubomaga.com/

著者紹介

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

Blog : http://www.kubomaga.com

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