世界陸上参戦をかけたドイツ陸上競技選手権を観戦 選手にとっても“特別”な母国の大会
連載「アクティブ ドイツ!」<12>
ロンドンで間もなく8月4日〜13日に開催される陸上の世界選手権は、日本でも“世界陸上”としてTV放映されますね。この世界選手権出場権をかけたドイツ国内の陸上競技選手権(Deutsche Leichtathletik Meisterschaften)を7月8日、9日に観戦してきました。開催地は、ドイツ東部のエアフルト。古式ゆかしき街のはずれにある、モダンなスタジアム「シュタイガーヴァルト シュタディオン」(Steigerwaldstadion)です。
あちらこちらで競技が勃発?
サッカー3部リーグ「FCロートヴァイス・エアフルト」のホームであるスタジアムは、サッカーフィールドとなるグリーンの芝とそれを囲む陸上トラックから成る多目的スタジアム。周辺にはスポーツ複合施設や、スポーツ専攻のギムナジウム、アイススケート場、スイミングプールなどがあり、地域の一大スポーツエリアです。
陸上競技の大会を初めて観る人は、どこを見たらいいのかと困惑するかもしれません。会場のあちらこちらで次々と異なる種目の競技が行なわれるからです。場内には、「次は女子走り幅跳です」「男子砲丸投げはチャンピオンの登場!」「男子走り高跳びの準備が始まりました」というように絶えずアナウンスが響いています。スタジアムも、これに対応できるような大きな会場である必要があります。
ドイツ陸上競技連盟(DLV)のセールスディレクターに務めるインゴ・ヴィアト氏は、「エアフルトとニュルンベルクでは4〜5年毎に開催しています」と説明。この2つを含め国内選手権開催のための設備や条件が充分に整ったスタジアムは、ドイツ国内に7〜8カ所あるといいます。
「施設があればどこでもいいというわけではなく、アクセスしやすい必要があります。飛行場があるのが望ましい。陸上はまた(観客や報道陣意外に)参戦アスリートは1,000人、それを支えるスタッフ500人、TV関係のスタッフ180人と規模が大きいのが特徴です」
ノリのいいBGMで会場の雰囲気もアップ
2日間の日程で行われた国内選手権は、スタジアムの最大収容人数およそ1万9000人のところ、初日にすでに1万2300人の観客を迎え大盛況でした。その賑わいっぷりは、駐車場へ着くなりスタジアム内から聞えてくる歓声に驚くくらいでした。
競技はプログラムの定時になるとフィールドの各所で行われ、選手は一人ひとり紹介されます。紹介時はもちろん、競技中のBGMとしてDJがベースのきいたノリのいいポップ・クラブミュージックを選曲し、会場の雰囲気を盛り上げます。スタートが肝心なトラック競技の前には賑やかだった音がパタリと止み、静まりかえった会場に緊張感が張り詰める様子がたまりません。
わたしが会場へ入った時は、カタリナ・モリトアが槍投げ女王に確定したばかりというシーン。向かい風気味というコンディションで、パーソナルベストは出なかったものの昨シーズンに続き世界選手権参戦を手にしたのでした。実はモリトア、昨シーズンはワールドチャンピオンのタイトルを取ったものの国内はタイトルなし。会場アナウンスのマイクが向けられると、「今回はドイツチャンピオンとして世界選手権に参戦できて嬉しい」と語っていました。
トラック競技は“花形”
観客の視線を集めるのはやはり短期決戦の100m走や、会場全体を使う長距離走などトラック競技。決勝戦が多く行なわれる夕方以降には、客席も徐々に埋まり始めました。
わたしは個人的にハードル観戦が好きなのですが、会場準備からしっかりと間近に見届けることができました。そのおかげで今回、男女でハードルの高さが異なることも知りました…当たり前と言われればそのとおりですね。
ハードルは、ランのかっこよさに加え、ハードル上の華麗な姿にほれぼれ。選手たちの俊馬のような美しい姿に魅了されてしまうのです。特に自身の体験と比較すると、体育の授業でわたしには決してできなかったなと、より憧れの眼差しで見てしまいます。
スタジアムのトラックは、1週間前に張り替え終えたばかりとあってピカピカ。通常新しいトラックは柔らかく記録が出にくいとされているそうですが、100m女子ではパーソナルベストが続出するなど花形競技がより沸き立ちました。
また女子3000m障害競走では、オリンピアンのゲーザ・フェリシタス・クラウゼに注目。ドイツ記録保持者で、2016年の欧州選手権(アムステルダム)では優勝を飾っています。初めから「勝利は確定」とされていたものの、2番手のみならず後続グループをみるみる引き離し周回遅れにするという圧倒的なスピードを見せつけると、会場は大歓声に包まれました。
クラウゼの記録は、9分25.81秒。フィニッシュ後のインタビューでは、「ドイツチャンピオンであることは特別」と喜びをコメントしました。さらに「こんなに多くの観客に見つめられて走ることは普段ない」と数々の国際的な大会で戦ってきた選手らしい感動の気持ちを表し、ウィニングランへ。観客からは、スタンディングオベーションで讃えられました。