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ドイツで羽ばたく日本人

自信につながったベルリン交換留学とインターン経験 本窪田耕輔さん

神戸大学が実施している1年間の交換留学プログラムで、ベルリン経済法科大学に留学をしている本窪田耕輔さん。留学前はベルリンに対するイメージがほぼ皆無だったそうですが、実際に暮らしてみて大正解と感じているそうです。

「レールから外れても生きていける考え方が身について、自信が持てました」

いったいどのような経験が、そうした自信につながったのでしょうか。

ベルリンは第1志望ではなかった

祖父が海外で仕事をしていたり、子どもの頃から英会話教室に通っていたりと、海外を身近に感じていたという本窪田さん。しかし、海外での本格的な長期滞在は今回の留学が初めてです。

じつは当初の留学先の希望はベルリンではなく、ミラノかバルセロナでした。しかし学内選考の結果でそれは叶わず、教授の勧めでベルリンで学ぶことに。

「最初はベルリンと聞いても、ベルリンの壁ぐらいしかイメージがなかったんです。でも調べてみたらスタートアップが集まっていて、生活しやすいのだろうと思いました」と本窪田さん。

 

ベルリンで迎えたクリスマス。

ベルリンで迎えたクリスマス。

留学先での勉強が楽しい

現在はベルリン経済法科大学(Hochschule für Wirtschaft und Recht Berlin, Berlin School of Economics and Law)で勉強中。昨年(2018年)9月にドイツに来て、現在8ヵ月が経過したところです。ドイツに来てから大学が始まるまでの2週間はドイツ語を勉強しましたが、大学の授業は英語で行われます。

大学での勉強は実践的で、日本とはまったく異なるとのこと。例えば学生が主体となってビジネスモデルを考えたり、イベントに参加したり。日本では講義を聞くという受け身の勉強だったので、ベルリンに来て勉強が楽しいと思えるのだそうです。

「大学の授業では学生たちが積極的に発言するし、自分も意見を求められます。答えるためには知識が必要だから、ふだんから勉強しないといけません。ドイツの学生は『今は勉強するときだからバイトをするのはナンセンス』と考えている人が多くて、同じ世代なのに勉強に対する意識が違うなと実感しました」

大学生活と平行してスタートアップでインターン

本窪田さんは、友人たちと故郷の姫路市でアトリエ付きのコミュニティハウスを立ち上げる準備をしています。外国人観光客が増えている割にゲストハウスが少ないと思うことと、来日する観光客は今後増えると予想されるので、ゲストハウス経営にビジネスチャンスがあるのではと考えてのことです。

ですからスタートアップに興味があり、ベルリンで数々の関連イベントに参加しています。そこではスタートアップのCEOを始めとする関係者と直接コンタクトが取れるメリットもあります。

積極的にスタートアップイベントに参加しています。

積極的にスタートアップイベントに参加しています。

 

ベルリンのスタートアップイベント。

ベルリンのスタートアップイベント。

1年間の留学中にスタートアップでのインターンを経験したいと考えた本窪田さんは、2019年2月から3月にかけての春休み期間に約50社にメールを送付。しかし、ベルリンには8月までしか滞在しないため、採用の返事は来ませんでした。

そこで発想を転換して飲食店でアルバイトを始めたものの、時給が法定最低賃金を下回るなどの問題が。そんな折にベルリンに進出した日系のスタートアップから声がかかり、インターンが決まりました。週2日から3日のペースで、社長の元で業務のサポートやイベントコーディネートなどの業務を始めたところです。

幸福度が高い生活を送れる

大学で勉強したり、コワーキングスペースで働いたりするうちに、本窪田さんはドイツでの生活はストレスが少なく幸福度の高い生活が送れるのではと考えるようになりました。それは勉強に対しても仕事に対してもオンオフのメリハリがはっきりしていることと、多様性を受け入れていることから来るのではないかと言います。

「ドイツの学生はメリハリがあります。勉強は真面目にするけど、オフの日はクラブで遊んだり、ピクニックをしてのんびりしています。コワーキングスペースでもみんな集中的に働いていますが、雰囲気はリラックスしています。オフィスに犬を連れてくる人もいますよね。メリハリがあって、それぞれの個性で生きているから幸福度が高いのかな?と思います」

誰もが自分のスタンスで伸び伸び生きていると感じたそうです。

さらに、スペイン人のフラットメイトと仕事について話し合ったところ、「仕事のために生きるなんてナンセンスだ。生きるために仕事をする」と言われて衝撃を受けました。

それまで「大学を出たら就職するのが当たり前で、社会人になったら仕事が100%」と思っていた本窪田さんは、「仕事は生活の一部」と考えが変わりました。

先日開催されたイベント "Asia Pacific Week 2019 Berlin" にも参加。

先日開催されたイベント “Asia Pacific Week 2019 Berlin” にも参加。

目標がある人にも、ない人にも、ベルリンはおすすめ

そんな日常を過ごしたり、スタートアップへのアプライなどを経験するうちに、「レールから外れても生きていくための考え方が身についた」そうです。

本窪田さんは現在22歳で、大学4回生。就職活動の真っ最中の日本の友人たちを見て焦ったこともあるそうですが、今は「日本で始めるコミュニティハウスのビジネスがうまくいかなかったら、就活を視野に入れればいいかと吹っ切れました。ここでたくさんの生き方の選択肢を見つけました」と考えるように。

それはベルリンでの経験があったからこそ、生まれた自信なのでしょう。

将来したいことがわからなかったり、逆に何かにチャレンジしたい人もベルリンに来たらいい」とも。

「日本の大学では、やりたいことを無理やり見つけて就活に結びつけようとすると思います。でも、やりたいことがないというのも素敵だと思います。もし何がしたいかわからない人がいれば、ベルリンに来ることをオススメします。ベルリンではアートも身近だし、ビジネス向けのイベントも多いから、自分が興味の持てることがわかるようになります。一方で、将来チャレンジしたいことがある人も、ベルリンなら多くのスタートアップや主体的な学生に関わることができるので、とてもいい環境だと思います」

「今を生きている感覚がある」と言う本窪田さんがベルリンに滞在するのは、あと3ヵ月。留学とインターン経験で密度の濃い日々になりそうです。

本窪田さんのブログ「ベルリン留学中の大学生の気ままなブログ」
https://kimbumbum5.hatenablog.com/

 

 

 

 

著者紹介

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

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