シュタルガルダー・シュトラーセで、自由への祈りとアイスのさんぽ
今回はシュタルガルダー・シュトラーセ(Stargarder Str.=シュタルガルト通り)をさんぽしましょう。ここも前回のオーダーベルガー・シュトラーセ(オーダベルク通り)同様、歩いて楽しいストリートです。
ドイツの通りの名前の多くは、地名または人名から命名されていますが、この通りはStargardという、現在はポーランドに位置する街から名付けられました。
ベルリンの壁崩壊前も、後も、自由への祈りを捧げる教会
シュタルガルダー・シュトラーセ1番地は、シェーンハウザー・アレー(Schönhauser Allee)という大通りとの角から始まっています。地図:https://goo.gl/maps/nzVhNdC5iJd1W5Kh8
1番地に立つと、左手に教会の塔が見えます。今は改修中で外観がよく見えませんが、近くまで行ってみましょう。
ゲッセマネキルヒェ(Gethsemanekirche =ゲッセマネ教会)というこの教会は、プレンツラウアー・ベルク地区で最も古いプロテスタント教会というだけでなく、実はベルリンの壁崩壊にも大きな役割を果たしました。
プレンツラウアー・ベルク地区は、東西ドイツ再統一前は旧東ベルリンに位置しており、当時の東ドイツ政府に反対し、民主化を求めるグループたちがここで活動していました。ゲッセマネキルヒェは、ミッテ地区のツィーオンスキルヒェ( Zionskirche=シオン教会)と並んで、民主化を求めるグループたちの集会の場となっていたのです。
壁崩壊の直前となる1989年10月、東ベルリンで行われた民主化要求のデモにおいてデモ参加者が逮捕される事件が起きたとき、ゲッセマネキルヒェではキャンドルに火を灯して、抗議の意を示したのでした。
では再び前進しましょう。
おいしいアイスでちょっと休憩
右手に見えるのは「クライネアイスツァイト」(Kleine Eiszeit)という名の小さなアイス屋さん。店内に席はなく、お店の前のベンチに腰かけて食べます。この通りにはもう1軒別のアイス屋さん「ホーキー・ポーキー」(Hokey Pokey)がありますが、そこができるまでは、歩道に常に行列ができていました。
ベルリンではカット&ゴーと呼ばれる、予約不要のヘアサロンがいくつもあります。店内で番号が書かれたチケットを取って待つだけ。自分の番号が呼ばれたらカットしてもらい、最後に自分でブローをして帰ります。マッサージや待つ間のドリンクなどのサービスは一切ないので、料金が安いのが魅力です。私も以前に何回か利用しました。教会のすぐ先にある「コップフゲルトイェーガー」(Kopfgeldjäger)も、そうしたカット&ゴーです。
さらに進むと、左手に何やら行列が見えてきました。そう、これが先ほどお話ししたアイス屋さん「ホーキー・ポーキー」(Hokey Pokey)です。
2011年にオープンしてからというものお客さんの列が絶えず、近隣住民から苦情が来るほどだったそうです。なぜそこまで人気があるのかといえば、たぶんそれまでにない凝ったフレーバーが揃っていることと、味がいいからなのだと思います。
値段は1スクープ1.80ユーロと、ベルリンにしては強気の設定にもかかわらずこれだけ大勢が買うのですから、試してみたくなりませんか?
えぇっと、私は……このココナッツ・マンゴーとシナモンのを頼みます。フレーバーのメニューは入り口の脇にも出ているので、並んでいるときに何にするか楽しく悩んで決めましょう。
アイスは店内でも食べられます。インテリアも素敵なので、ぜひ見てみてください。
さて、アイスのお味はいかがでしたか。ちなみにアイス屋さんは2軒とも冬季休業です。冬は寒くて、アイスどころではないですからね。
いきなり休憩してしまいましたが、シュタルガルダー・シュトラーセはまだ始まったばかり。ちょっとテンポを速めていきましょう。
歩道から感じる歴史のひとしずく
進行方向右手に、公園が2つ見えてきました。どちらの公園でも子どもと大人が遊んでいます。こんなふうにホッとできる場所がたくさんあるのが、ベルリンの大きな魅力の一つです。
ここまで来たらシュタルガルダー・シュトラーセはあと少し。前半部分に比べると、お店もグッと減ります。
進行方向右手の38番地まで来たら、足元に注目してください。金色に光る「シュトルパーシュタイン」(Stolpersteine=躓(つまづ)きの石)が歩道に埋められています。
これはナチスによって殺されたユダヤ人らがここに住んでいたという印。それぞれのプレートには、犠牲者の名前と生まれた年、死亡した日付と場所が刻まれています。このプロジェクトは、グンター・デムニッヒ(Gunter Demnig)というベルリン生まれのアーティストによって始まりました。
この先でプレンツラウアー・アレー(Prenzlauer Allee)とぶつかって、シュタルガルダー・シュトラーセは終わります。つまりシュタルガルダー・シュトラーセは、南北に走るシェーンハウザー・アレーとプレンツラウアー・アレーの2本の大通りを結んでいるのです。
この後は近くにあるプレンツラウアー・アレー駅からSバーンに乗ってもいいですし、トラム(路面電車)に乗るのも楽しいと思います。
今月はこのへんで解散です。また来月ご一緒にさんぽしましょう。ご案内は、ベルリン在住ライターの久保田由希でした。