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音楽大学が示す、新たな時代への対応

みなさん、こんにちは。お元気でお過ごしでしょうか?

ここ最近は暖かく、晴天に恵まれているケルン!お散歩好きの私は、ライン川沿いなどを歩きながら気分をリフレッシュしたりしています。

日本や多くの国々では緊急事態宣言が解除され、ドイツでも各地で急速に暖和が進んでいます。しかし以前と全く同じ状態に戻ったわけではなく、様々な場所での衛生面管理や公共交通機関・公共施設・商業施設などでのマスク着用が義務化され、暮らしが大きく変化しました。

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駅構内でマスクを着用する人々

多くの学校では、一学年ごと週一回の登校になったり、現在もオンラインでの授業が続いている学校や大学がほとんどで、授業形態が少しずつ変化しています。そんな中、ドイツの音楽大学は現在どのように変わってきているのか、今回は私の母校であるケルン音楽大学構内の様子をみなさんにお届けしたいと思います。

 

厳しい入構制限

ケルン中央駅には2つの出口があり、観光客が多いメインゲートの大聖堂口とその反対側にある大きな広場とつながっているブレスラウアー広場口に分かれています。ブレスラウアー広場口を出て、ヨハニス通りを真っ直ぐ進むと(途中で通りの名前は変わりますが)、徒歩約10分ほどでケルン音楽大学に到着します。

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ブレスラウアー広場

途中には、学生が利用する飲食店などがいくつかありますが、この辺では人気のあるお店の一つ「五つ星のパン屋さん」は、なんと今では順番を待つ長蛇の列が店の外まで・・・!今までに見たことのない光景です!

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通りを挟んでパン屋さんに並ぶお客の列

現在ドイツではスーパーやお店に入店する際、人数が制限されている場合がほとんどで、一列に並んで自分の番を待ち、順番が来たら入店するという仕組みになっています。上の写真のようにきちんと列を成して辛抱強く並んでいるドイツ人に対し、時には日本人の私の方が途中で我慢できなくなってしまい、列から外れることもあるくらいです。(笑)

ここを過ぎ、さらにまっすぐ行くと、赤と緑の現代的な建物が見えてきます。
ケルン音楽大学です。

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ケルン音楽大学正面口

正式名称はケルン音楽舞踊大学。特に歴史あるヨーロッパ有数の音楽大学の一つで、1850年にケルン音楽院を前身として創立されました。また同じノルトライン・ヴェストファーレン州内にあるアーヘンとヴッパータールにも分校があるため、ドイツでもかなり大きな規模の音楽大学と言われています。

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近代的で塗装がやや派手な感じの外観

以前は割と自由に出入りができた「ケルン音大」ですが、現在入り口には厳しいセキュリティが設置されており、既に部屋を予約済みの生徒、レッスンをする教授や講師の先生方、そして音大内で予定がある人のみ入ることが可能です。これに加えて入構する際には、自身の名前、学籍番号、どこの部屋へ向かうかなどを記入し、やっと構内に入ることができます。かなりセキュリティが厳しくなったように思います。

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学生証でIDチェックができる機械

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マスク着用義務を知らせる張り紙

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感染症予防対策についての決定事項

 

音大生の練習環境

音楽大学には、生徒が楽器を練習するための練習室があり、その部屋を予約して自身の練習場所を確保します。学生の中には、隣人との騒音トラブルの影響で自分の住んでいるアパートなどで十分に練習を出来ない人や、楽器自体を部屋に置いていない人、ピアノ科でしたらグランドピアノはもちろん、アップライトピアノも難しい状況で、電子ピアノしか置けないという人達も少なくありません。そのため、ドイツの音大生の多くは楽器の練習を大学キャンパス内で行います。

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キャンパス内の練習室

既にご存じの方も多いと思いますが、ドイツにはRuhezeit(静寂時間)という大きな音を立てずに静かに過ごさないといけない時間帯があります。

ケルンのあるノルトライン・ヴェストファーレン州の場合、平日と土曜日は13時から15時までと22時から翌7時まで、日曜日と祝日は終日です。これは法律で定められているため、自宅での練習は制限されてしまいます。さらにドイツ住宅協会によると、一般的なアパートやマンションに住んでいる場合、楽器の演奏時間は1日2-3時間までと決まっているようなので(2020年6月現在)、自宅練習が許可されている場合であっても、ほとんどの学生は大学の練習室等を使って練習することが多くなります。

この外出自粛期間中ほぼ全ての大学が閉まっていたこともあり、自宅に楽器がない学生などはとても苦労したというお話を聞きました。また、大家さんの許可を得て自宅で楽器演奏ができる人でさえも、お隣さんがリモートワークでお家にいるという理由から自宅での練習が厳しくなったり、「苦情を言われて練習ができなくなってしまった」なんて声も多く聞かれました。

そのような中、ケルン音大は5月頭~学校が開き始めて練習室も使えるようになり、練習ができないことに対する学生のストレスが軽減されてきています。さらにそこには少しの工夫も取り入れられていました。

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全ての練習室のドアに貼ってある利用時間表

貼り出されている時間表を詳しく見てみると、少しでも人との接触を避けるために練習の時間帯が隣の部屋とで1時間ずつずらされています。これは隣同士の練習室への出入りが重ならないようにした大学の感染防御対策の一つです。また、2時間の練習時間毎に必ず1時間の空き時間を設けて、清掃・除菌・換気等が全ての音大で義務付けられています。

ただ、練習室を利用できる時間が以前と比べてかなり減少してしまったことで、各学生の全体的な練習時間も共に減少してしまい、また新たな悩みが増えてしまったという声もあります。これらの問題が、一日も早く解決されますように…!

 

次回は、音大のレッスン室の様子や授業形態について、他の音大の様子なども交えながらお伝えしていきたいと思います!

 

著者紹介

久保田早紀

東京都出身。2010年に招待された夏期国際音楽祭をきっかけに「ドイツでピアノを学びたい!」と強く思うようになる。翌年大学卒業後、ケルン音楽大学大学院に入学、ドイツ語もままならないまま初めての一人暮らしがスタート。異国の地ドイツで厳しい洗礼を受けながらも、多くの音楽仲間に支えられながら修士課程を修了する。その後、デトモルト音楽大学にて更なる研鑽を積み、ドイツ国家演奏家資格を取得。ドイツ各地で演奏をしていく中、聴衆からの暖かい言葉に心を打たれ、ドイツでの演奏活動を精力的に続ける。また、自分を大きく成長させてくれたドイツへの感謝の意も込めて、複数の音楽学校にて後進の指導にも力を入れている。突然のハプニングも笑って過ごせるようになってきたケルンひと筋、もうすぐ10年目。カフェとお散歩が大好きなフリーランスピアニスト。

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