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音楽でもっとわかるドイツ Culture Pick Up

再開したコンサートホール

先週から気温がぐっと下がり、すっかり秋めいてきたケルン。マスク着用やソーシャルディスタンスなどに注意を払いつつも、街は落ち着きを取り戻しています。

木々の葉の色が変わり始めた公園

しかし、通常に戻るのが困難とされていたのが大きな劇場やコンサートホールでのイベント開催。ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団とケルンWDR交響楽団が拠点を置くホール「ケルン・フィルハーモニー」もその一つで、3月に接触制限が始まって以来ほとんど全てのイベントがキャンセル、又は延期に追い込まれました。

このような中、ノルトライン=ヴェストファーレン州は一定の衛生基準を満たすことを条件に「100人以下」のイベントの再開を5月30日から認めたため、ケルン・フィルハーモニーではその日からコンサートシーズンが終了する6月下旬までの約1カ月間、わずか8日だけでしたが人数制限を伴った特別プログラムで様々なコンサートが行われました。

今回はその中から、6月下旬に行われた「制限が緩和されてから初」となるピアノコンサートの様子をお届けします!

コンサートの案内

今回行われたピアノコンサートは、本来なら5月に予定されていたコンサートでしたが、再公演日は未定のまま延期されていました。同時にチケットを購入した別のコンサートはすでに1年後に延期されていたので「このコンサートも来年に延期かな」と思っていた矢先に、ケルン・フィルハーモニーから「コンサートは6日後に行われます」という内容の手紙が送られて来て、突然のことにびっくり。そこには「来場者が密の状態にならないようソーシャルディスタンスをしっかりと保ちます。そして少しでも多くのお客様に演奏会を安心して楽しんでもらえるように、今回の公演は特別に同じプログラムを同日に2度、18時と21時から開催致します」と記されていました。

プログラムの内容は変更されて公演時間が少し短くなっていましたが、途中で休憩を取らずに演奏すること、更に2回の公演の合間には2時間弱しか空いていないことに「どのような感じのコンサートになるのだろうか」と興味が沸いてきて、実際に行ってみることにしました。

ケルン・フィルハーモニー

ケルン大聖堂のすぐ近くにある美術館と隣接する建物に、年間「約400件」のイベントを開催するケルン・フィルハーモニーがあります。ケルン中央駅からの行き方は色々あり、最短ルートで行くと歩いて約5分程で着きますが、今回は久しぶりにこの付近を訪れるということもあって、ケルンの観光スポットを通るルートで行ってみることに。

ケルン中央駅の正面口

ケルン中央駅の正面口を出るとすぐ左手にケルン大聖堂が見えます。ここから見えるのは大聖堂の側面部。

この階段を登り、大聖堂の右側を進んで行くと、ケルン大聖堂の正面口まで来ます。

さらに大聖堂をぐるっと囲むように進んで行くと大きな広場に出ます。この広場の先には、ローマ・ゲルマン博物館(Römisch-Germanisches Museum)がありますが、1階には通り抜けられる通路があります。

右側にはケルンで行われる様々な音楽イベントのチケットが購入できるチケットセンター、左側には博物館の入口、通路には博物館の展示物が一部置かれていて、自由に見ることができます。

ここを通り抜け、正面に見える階段を降りると、すぐ左側にあるのがケルン・フィルハーモニーです!

久しぶりのコンサート

この時期に開催されているコンサートはいつもとは違い、チケットを持っていても直ぐにホールに入ることはできません。開演90分前にホール前に来て、ケルン・フィルハーモニーから届いた手紙に同封されていた書類に本人の氏名と住所などの連絡先を書いてホールスタッフに提出することが必須となっています。これはコンサートに参加する意思を示すことだけでなく、新型コロナウイルスのクラスターが発生した時に追跡調査ができるようにするためです。

来場者をチェックするホールスタッフ

私のチケットは21時からの公演に割り振られていたので、指定された19時半にホール前に到着して5分程度で手続きを終え、あとはコンサートが始まるのを待つのみ。

そして、いよいよ待ちに待ったコンサート!

マスク着用のチェックと一人ずつ手の消毒をされてから中に入っていきます。

館内に入りスタッフに言われた方向に進んで行くと、ホール内には別のスタッフが待機していて、1人ずつ前から間隔を空けて案内されます。

座席の配置には様々な制限が設けられているため、前後は1列ずつ空けて、そして隣の人とは3~4席分の距離を空けて座っていきますが、一緒に来ている人達は隣同士に座っても良いようでした。

この日の演目は、ロシア人ピアニストのアレクサンドル・メルニコフによるピアノ・ソロコンサート。

休憩を挟まずに70分程演奏して、その後にアンコールも2曲披露するというコンパクトになったとは思えないほどの内容の濃いプログラム!これと同じものをわずか数時間前に既に1公演行ったとは全く感じさせない、迫力と繊細さを合わせた素敵な演奏でした。

演奏中の舞台の様子や客席の雰囲気を写真でお見せすることができないのは残念ですが、会場全体に響き渡る心地よいサウンドを聴いて、改めて生演奏の素晴らしさを感じさせてくれました。制限期間中ずっと自宅にいた頃の事を考えると、久しぶりにホールで演奏を聴ける喜びで胸がいっぱいになりました。

コンサートが終わり席を立つと、皆さんマスクの上からでもわかるような微笑みで、コンサートにとても満足している様子。

ケルン・フィルハーモニーでは、本日(9月4日)から定期コンサートなどを含む様々なコンサートが本格的に始動します。6月に開催されたコンサート同様に、休憩を挟まない形が続くようですが、人数制限も「1,000人」まで参加することができるようになったり、チケットの購入時にも前後左右の間隔を空けることなく座席を自由に選べるようになっていたりと、以前の姿に戻りつつあります。

いつもは大勢の来場者で賑わうホワイエ

多くの素晴らしい音楽家たちが演奏するコンサートを聴けることが今からとても待ち遠しく、こういう時だからこそ音楽が与えてくれるパワーを身をもって実感します。

現在の状況下ではまだ難しいですが、状況が改善してドイツに来る機会がありましたら、ぜひケルン・フィルハーモニーにも足を運び、この特別な空気感を味わっていただきたいです!

著者紹介

久保田早紀

東京都出身。2010年に招待された夏期国際音楽祭をきっかけに「ドイツでピアノを学びたい!」と強く思うようになる。翌年大学卒業後、ケルン音楽大学大学院に入学、ドイツ語もままならないまま初めての一人暮らしがスタート。異国の地ドイツで厳しい洗礼を受けながらも、多くの音楽仲間に支えられながら修士課程を修了する。その後、デトモルト音楽大学にて更なる研鑽を積み、ドイツ国家演奏家資格を取得。ドイツ各地で演奏をしていく中、聴衆からの暖かい言葉に心を打たれ、ドイツでの演奏活動を精力的に続ける。また、自分を大きく成長させてくれたドイツへの感謝の意も込めて、複数の音楽学校にて後進の指導にも力を入れている。突然のハプニングも笑って過ごせるようになってきたケルンひと筋、もうすぐ10年目。カフェとお散歩が大好きなフリーランスピアニスト。

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