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コロナ禍でも露わに 日本とドイツの謝罪文化の違い

昨年の春にコロナ禍になってから、約1年半。ドイツも日本もコロナ禍が始まったばかりの頃は感染症対策が「手探り状態」でした。当時は私も「得体のしれないウイルス」を前にものすごい恐怖を感じました。

コロナ禍が長引き、「緊急事態宣言になったり、それが解除されたり」が繰り返されていますが、当初は「完全に未知なるもの」だったウイルスの詳細が徐々に分かってくるにつれ、当初のような強烈な不安からは(少なくとも私は)解放されつつあります。

 

ところで先日ある女性(Aさん)と話していた時に「日本人とドイツ人のコロナへの向き合い方の違い」の話になりました。ウイルスそのものへの向き合い方の違いというよりも、人間関係的なことに関する違いです。

Aさんは日本語とドイツ語を使う仕事をしていて、日頃からドイツ人とも日本人とも頻繁にかかわっています。そんななかで、こんな話をしてくれました。Aさんが日本人Bさんと仕事で会った直後、Bさんの新型コロナウイルス感染が発覚してしまいました。すると、日本人BさんはAさんを含む仕事関係者全員に連絡をするとともに「私が新型コロナウイルスに感染したせいで、皆さんにご迷惑をおかけしてしまい本当に申し訳ございませんでした」と謝罪をしたといいます。

 

そして数週間後。今度はドイツ人Cさんと一緒に仕事のミーティングをしたAさん。ところがその直後にCさんの感染が判明してしまいます。するとそのドイツ人Cさんからは「感染が発覚したよ!君も気を付けてね!」とAさんにメールがありました。感染したことについて謝罪はなく、メールの内容も明るくサラっとしたものだったといいます。

 

この話をAさんから聞いた時、「あ、日本とドイツの違いに関する『あるある』だ!」と不謹慎ながら笑ってしまいました。

 

コロナ禍になる前から日本では社会人が病欠すると「皆さんにご迷惑をおかけしたこと」を謝らなければいけないような雰囲気がありました。でもドイツには「自らがかかった病気」を周囲に謝罪して回る習慣はありません。だからCさんは、コロナに感染しても、濃厚接触者だったAさんに謝ることはしなかったわけです。

 

幸いその後の検査でAさんはコロナに感染していないことが分かり、ドイツ人Cさんも、前述の日本人Bさんも症状が軽症で済んだとのことです。

 

このように日本とドイツでは「謝罪文化の違い」があります。そのため日本人とドイツ人がかかわると、誤解が生じることもあります。

 

日本では「個人」も謝罪を大事にしますが、「企業」ならなおのこと謝罪を大事にします。だから御巣鷹山での墜落事故について、36年経った今もJALの社員は毎年慰霊登山に参加し、遺族の気持ちに寄り添うことで「謝罪」を続けているわけです。

 

2015年にはスペインからドイツに向かっていたドイツの飛行機をパイロットが意図的に墜落させるという事件が起きましたが、その時の航空会社の対応はJALと比べると信じられないぐらい『サラッとしたもの』でした。36年後も遺族に寄り添うことはまずないでしょう。

死亡事件が発生しても、ドイツを含む欧州の会社というのは基本的には「弁護士任せ」「保険会社任せ」であるため、日本のような「何年経っても、被害者や遺族に寄り添う心のこもった対応」は期待できません。

その背景には宗教観の違いもあり、理由を追及すると論文並みに長くなってしまいまうため、この辺で・・・。

ただドイツ人と接する人は、こんなこともあったりしますので、自分が傷つかないためにも、「ドイツと日本の間には謝罪文化なども含めた、人間関係の違いがある」ということは頭のどこかに入れておいたほうがよいかもしれません。

 

・・・皆さん、良いお年を。また来年2022年にお会いしましょう。

 

サンドラ・ヘフェリン

 

著者紹介

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

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