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文化と「食べ物の好み」のお話

先日、日独ハーフのお子さんのいる親御さんと話しました。「子供をバイリンガルにするのは難しいよね」「文化の継承も想像以上に大変よね」というようなお話です。

 

言葉や文化の継承の何が難しいかというと、、、

 

たとえば母親がドイツ人×父親が日本人で「日本に住み日本の公立の小学校に通う子供」の場合。先生も同級生も当然日本人が大多数ですから、子供は「日本の文化」の中で生活しているわけです。子供からすると、その中で日本的でないのは「ドイツ人の母親」だけです。

 

「自分のお母さんはほかの同級生のお母さんとは少し違うな・・・」と子供が気付いた時に、そのことをポジティブにとらえられるとよいのですが、現実的な話を書くと、子供は「みんなと一緒(同じ)がいい」と感じることもよくあるようです。

 

日本に住みながら子供に外国語(この場合はドイツ語)を教えたい場合、ドイツ人の母親は子供にドイツ語で話しかけるわけですが、一部の子供はそれを「目立つから嫌」「ほかの子と違うから嫌」と感じるようです。

 

「ドイツ人のお母さん」は「日本では外国人」ですから、場合によって服装や髪型のセンスがほかの日本人のお母さんと違っていたり、子供のお弁当に持たせるものも違ったり、なんていうこともあり、そうすると「みんなと同じがいい」と考える子供は孤独を感じます。大きくなれば母親のことをちゃんと分かってくれることが多いですけどね。

 

ドイツの文化を伝えようと、親が子供にドイツの歌を教える場合も、興味を持つ子もいれば興味を示さない子も。後者はやっぱり「お友達の目」が気になって、「日本的でないもの」に拒否反応を示しているのかもしれません。

 

意外と難しい 文化と「食べ物の好み」の問題

 

先ほどお弁当のことをチラッと書きましたが、異なる文化の間で育った人は「食べ物」関連で色んな経験をしています。それは「色んなものが食べられる」というグルメな話ではなく、「自分が好きな食べ物について、ほかの人から拒否反応を示される」という苦い経験です。

 

今でこそ、SUSHIは世界的に知られるようになりましたが、SUSHIブームが来る前、欧米では「海苔」を知らない人も多くいました。海苔を見ると「グロテスク・・・」と思ってしまう人も。ちなみに今でも欧米にはその感覚が多少は残っているため、欧米諸国で見かけるSUSHIは外側に海苔が巻かれていないことが多いです。

©Colourbox.de

「あんこ」は難しい

 

映画HAFU 女性が子供時代の思い出として、自分が家から持ってきた「おにぎり」について、オーストラリア人の先生に「よくそんなものが食べられるわね」と言われたエピソードを語っています。

 

子供の頃から二つの文化の間に挟まれて育つと「そういうこと」に敏感になるのかもしれません。

 

外国人(欧米人)へのお土産を用意する際に「なるべく日本らしいものを」と思い、和菓子をプレゼントする人もいますが、私としてはヒヤヒヤしちゃいます。というのも、いわゆる欧米圏の人でたとえば「あんこ」をすんなり受け入れてくれる人にはあまり会ったことがないからです。

 

食わず嫌いでそもそも食べようとしない人も多いです。かといって、実は私は外国人(たとえばドイツ人)に「あんこ」について質問をされるのもあまり好きではありません。というのも以前、こんな会話をしたことがあるからです。

 

Aさん:

„Was ist eigentlich das Schwarze in den japanischen Süßigkeiten?“

(和訳「日本のお菓子に入ってるあの黒いのは何?」)

 

私(サンドラ):

„Das sind süße Bohnen, die…“

(和訳「あれは甘い豆で・・・」)

 

と続きを話そうとしたところ、もうsüße Bohnen(甘い豆)と告げた時点で相手の顔が歪んでいくのが分かりました。まさに口は「ヘ」の字に、鼻のあたりはしわくちゃに、そして目はギョッとしたように見開いています。

 

「食わず嫌い」ならば、その食べ物についてキチンと説明をすれば食べてもらえるんじゃないか・・・・?という淡い希望が見事に打ち砕かれたわけです。

 

私は大福が大好きなのですが、上のような経験をしているため、「ぜひドイツ人に大福を食べてもらおう!というようなことはあまり考えないようにしています(笑)

 

文化と文化の狭間に生きていると、「国Aで美味しいものが、国Bで美味しいと思われるとは限らない」ということを嫌というほど実感させられる場面があります。ちなみに亡きドイツ人の父も味噌汁が最後までダメでした・・・

 

そんなこんなで、私は欧米人と一緒に仕事で出張に行くと、そのホテルの朝ごはんに「和食の朝ごはん」があっても絶対に手を出しません。なぜならば欧米人の前で、私の大好きな納豆を食べる勇気がないからです。

 

先ほど「子供はみんなと一緒(同じ)がいいと考えがち」と書きましたが、大人である私も実はみんなと一緒(同じ)がいいのだということを認めざるをえません。きっと小心者なのでしょうね。「朝ごはんはパン」の人の前では「自分もパン」です!

 

周りに日本人が多くいる時は、私も大好きな納豆ご飯を・・・という感じですかね。

 

多様性の時代と言われていますが、「食」ひとつをとっても、現実的な話になると多様性を実践するのって、なかなか難しいですね。

 

・・・とドイツと日本の文化の狭間で育った私のひとりごとでした。

 

サンドラ・ヘフェリン

著者紹介

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

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