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環境保護と文化の狭間で

寒い日が続きますが、皆さまお元気にしていますでしょうか?

 

ドイツの12月といえば、クリスマス、そして大晦日。どちらもドイツ人が大好きなイベントです。

 

ただちょっと困った問題も。

 

それは・・・ドイツというと環境を大事にしているイメージがあり、実際にその通りではあるのですが・・・・

 

それでもクリスマスシーズンが近づくと、「本物のクリスマスツリー」を家に飾ることにこだわるドイツ人は多いのです。プラスチックなどのフェイクのツリーではなく、本物のTannenbaumをリビングに飾るわけです。ただ、クリスマスが終わり1月に入ると、これらの「本物の木」は大量に捨てられてしまっているのです。。

 

何だか木がかわいそうに思えてきます。これを見るとNaturschutz(自然保護)とは・・・・?と考えさせられます。

 

そしてドイツの大晦日といえば、花火(独語Feuerwerk)です。寒い冬の夜、年が変わるその瞬間に打ち上げる花火を見ると感動します。私もドイツで長年生活していたので、よくわかります。ただUmwelt(環境)の観点からみると・・・・・花火は最悪なのですね。環境にも良くない上に、事故も多いですし、あえて写真はアップしませんが、年が明けてからは街のいたるところに前日に打ち上げられた花火の残骸が放置されていて最悪です。。

 

私が言いたいのは、「クリスマスツリーは全部フェイクにしましょう」とか「大晦日に花火をあげるのはやめましょう」ということではなく、どんなに特定のこと(例えばUmweltschutz環境保護)に力を入れても、「長年の文化や習慣を変えることはなかなか難しい」ということをもっと自覚してもよいのでは?ということです。

 

主義を持ちつつ他人を思いやるということ

 

たとえば日本のデパートや和菓子店で物が丁寧に包装されることについて、ドイツの人は簡単に「環境に悪い」と言ったりしますが、それは日本が(ドイツとは)違う文化だから気軽に言えてしまう部分があると思うのです。

 

日本には昔から物を丁寧に包む文化があるけれど(もっとも日本でも最近はSDGsを重視して以前より少なくなってきています)、ドイツには物を丁寧に丁寧に包む習慣はそもそもない。そしてそういう習慣と文化がないから「他国である日本の習慣(物を包む)」について、たやすく「環境に悪い!」なんて言えてしまうわけです。

 

前述の「本物のクリスマスツリー」や「花火」について、ドイツにも「環境を考えるとそれはどうなのか」という意見がないわけではありません。でも、多くの人が「本物のクリスマスツリーはけしからん!花火はけしからん!」と強い怒りを持っているかというと・・・・やっぱり違うのです。それは「大晦日に花火を打ち上げる」ことも、「クリスマスに本物の木を飾る」ことも、長年ドイツで行われてきた文化だからです。(ただ一部では、役目を終えたクリスマスツリーを「像さんの餌」にして有効活用しているところもあります。素晴らしいですね。)

 

南の島でUrlaubはやっぱり大事

 

ドイツでは今、「環境のことを考えてなるべく「CO2を大量に排出する飛行機」ではなく、電車で移動しましょう」という考えになりつつあります。でも、それはあくまでも、例えばミュンヘンからパリに行くときに、飛行機ではなく電車で行く人が増えたということです。

 

ドイツではタイが好きな人が多いですが、「タイに行くには飛行機で行かないといけないから(環境に悪いから)、タイの島に行くのは諦めて、ドイツで国内旅行をしよう」なんて考えるドイツ人はあまりいません。なぜかというと、ドイツ人にとって「Urlaub(休暇)のとき、自分が好きな南の島に行く」ことはマストつまりは生きがいそのものだからです。

 

地球のことを第一に考えると「Urlaubで遠い南の島に行きたいから」と飛行機に乗ることはアウトなのかもしれませんが・・・「自分が生きている間に思う存分やりたいことがしたい。楽しみたい」と思うのもまた人間。ある意味egoistischなのが人間なのですね。日本流にいえば「仕方ない」といったところでしょうか。

 

だからこそ、例えばumweltbewusst(日本語「環境意識が高い」)であるなど、自分の主義を持ちつつ、他人に対して厳しすぎないことが大事なのではないかと思う今日この頃です。

 

くれぐれも、「自分たちが自分の国の文化で長年やってきたことはオッケー」「けれども、外国の文化のここを直したほうが良い」と当たり前のように、そして上から目線で言わないように気を付けたいものです。主義を持ちつつ他人を思いやることができれば一番よいですね。

 

・・・・今年最後の私のひとりごとでした。

 

みなさま、メリークリスマス&良いお年をお迎えください。

 

サンドラ・ヘフェリン

 

P.S.文中に出てきた「ドイツの大晦日の花火」に関しては、シリアなどの中東、そしてウクライナから逃げてきた子供達が、花火の音が戦時中の爆撃の音と似ていることから、ショックを受けるという問題も浮き彫りになっています。・・・・早く戦争が終わるといいですね。

著者紹介

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

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