葡萄畑に囲まれて─アルザス近くの小さなドイツの村で過ごした日々
 
							フランスとの国境にほど近い、ドイツ南西部の小さな村に、約五年間住んでいました。夫の故郷でもあるこの村は、一面が葡萄畑で囲まれています。私にとってここは、ドイツでの生活、そして妊娠・出産・子育てが始まった、思い出深い場所です。
今回から数回に分けて、私が過ごしたドイツの村での生活をご紹介したいと思います。
季節によって色が変わる。とにかく一面葡萄畑
人口約800人。あたり一面が葡萄畑。一年暮らせば、葡萄がどのように実り、収穫されていくのか自然と知ることができました。ベビーカーを押しながらよく近所の散歩に行きましたが、季節によって畑の色が移り変わり、ポストカードのようにとても綺麗でした。ただ、冬の間はずーっとグレー色の空と茶色い大地が広がります。
そして毎年秋には、かごいっぱいの葡萄を近所の人や義理の母からいただいていました。日本のスーパーで葡萄を見るたびに、「あの頃はなんて贅沢だったんだろう」とよく思い出します(笑)。特にコロナ禍の頃は、外に行けば遊ぶ場所が無限にあるこの村の自然に本当に救われました。






ビール?いいえ、ワインです
ドイツといえば、「ソーセージとビール」というイメージですが、ここの地域ではワインが主役。Weingut(ヴァイングート)とはドイツ語でワイナリーという意味で、村の周辺にはたくさんのワイナリーがあります。夫や義母に誘われて、友人や知り合いが営むワイナリーを訪れ、醸造工程を見せてもらったり、たくさんのワインを試飲させてもらいました。ドイツ人の夫がほとんどビールを飲まず、ワイン派なのも納得。

絵本の中のような街並み
私がこの村に初めてきた時、車の後部座席から流れる街並みを見ながら「え・・・絵本の中みたい・・・。」と思ったのを覚えています。木組のかわいい家々が並んでいて、窓からはそれぞれの家にちゃんとあった花が咲いていました。村にはFerienwohnung(フェーリエンヴォーヌング)と呼ばれる貸別荘もあり、夏のバカンスシーズンには、自然やワインを楽しみに都会から訪れる家族連れや夫婦を時々見かけました。



私たちの小さな家。鳥の声で目がさめる
義母の昔からの友人で、夫を小さい頃から知っているシュルツさんご夫婦が離れの家を貸してくれました。この家は隣のおばあちゃんの広ーい庭に面していて、夏はとにかく鳥達の声がにぎやか。綺麗なかわいらしい声ですが、数が多い、そしてなかなかの声量。姉とテレビ電話をしていると「鳥の声すごいね(笑)」と言われたり、夏の朝は鳥たちの声で目が覚めることもありました。家の中に洗濯機や乾燥機はなかったので、いつもシュルツさん宅の地下室にあるものを使わせてもらっていました。

近所のおばあちゃん兼シュルツさんご夫婦のお庭。写真左奥、木の間から少し見えている小さな家に住んでいました。
夏の芝刈りは必須
この村では、広い庭を持つ家が多く、夏の芝刈りは欠かせません。
週末になると、あちこちから芝刈り機の音が聞こえてきます。ただ、ドイツは掃除機や洗濯機、芝刈り機など音の出る家電を使用する時間帯が地域ごとに決まっているので、芝刈り機がうるさくて目が覚めるということは一度もありませんでした。広いお庭はとても素敵ですが、お手入れの大変さもその分しっかりあります。

庭の手入れは大変だけど、毎年5月には綺麗なバラがたくさん咲きます。
車は必需品
私の家から最寄りのバス停は、バスは1時間に1本。その為村での暮らしには車は必需品。ドイツに移住する前に国際免許を取得し、葡萄畑に囲まれながら運転の練習をしました。初めての左ハンドルにドキドキしながら、最寄りのEDEKA (スーパー)まで車で7分、歩くと40分。小児科や市場のある隣町まで行くときは、いつも緊張していました・・・。ドイツ在住で高速道路や都会で運転している方、本当に尊敬します。

決して便利とは言えない環境でしたが、あんな景色に囲まれて暮らすことは、もうないかもしれないと思うと、あの日々を時々恋しく感じます。少し大きくなった息子たちを連れて、いつかまたあの小さな離れの家を訪れたいなと思います。
次回は、この村での「季節と自然の楽しみ」についてご紹介します。
 
										 
								
							 
								
							 
								
							 
								
							 
								
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
													 
													 
													 
													