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ドレスデンのシュトレン祭り

ドイツのクリスマスに欠かせないお菓子といえば、ドライフルーツやナッツ、バターをたっぷり贅沢に使ったシュトレン。その本場として有名なドレスデンで開かれるシュトレンフェストに行ってきました!盛大な歴史パレードや巨大シュトレンなど、楽しいお祭りの様子や見どころをお伝えします。

シュトレン or シュトーレン?

シュトレン祭りのお話の前に、「シュトレン (Stollen)」の名前についておさらいを。

日本では「シュトーレン」と、トーをのばして表記・発音されることが多いのですが、ドイツ語の発音はのばさず「シュトレン」となります。

詳しくはこちらの記事でどうぞ

>>シュトレンとシュトーレンの違いとは?

シュトレンの歴史

ドレスデンのシュトリーツェルマルクト

シュトレンの本場として有名なのが、東部ドイツの古都ドレスデン。「ドレスデンのシュトレン」といえば商標登録されているブランド品で、最古のクリスマスマーケットのひとつとされるクリスマスマーケットは、「シュトリーツェルマルクト」(ドイツ語でシュトレン市場の意味)と呼ばれるなど、シュトレンが町のシンボルとして愛されています。

じつはシュトレンの起源には諸説あり、1329年にナウムブルクの司教へのクリスマスの贈り物としてつくられたのが最古の記録とされています。
ですが当時は宗教上の理由でバター等の乳製品が使えず、現在のようなシュトレンとは異なる、素朴なパンのようなものだったようです。

15世紀後半、ザクセン選帝侯がローマ教皇に懇願したことでようやくバター使用許可証が公布され、ドレスデンでは乳製品を使ったシュトレンが作られ、宮廷へ献上されるようになりました。

シュトレン祭りの歴史と開催日

1730年当時、ザクセンとポーランド王を兼務し強大な権力を誇っていたドレスデンのアウグスト王が、軍隊の強さを誇示するために、ヨーロッパ中からゲストを招き軍隊ショーを開きました。

この祝祭のハイライトとなったのが、王が60人もの職人に焼かせた1.8トンの巨大なシュトレン。それを切り分けるために作られた特注の12キロのナイフでカットされ、ゲストにふるまわれました。

この史実をもとにして、毎年ドレスデンで開催されるのがシュトレン祭りです。

お祭りはアウグスト王の即位300周年を記念して1994年に始まり、コロナ禍は中止されましたが、今年は30回目という節目で大いに盛り上がりました。

シュトレン祭りの開催日は、毎年第2アドベントの前の土曜日。
2025年は12月6日(土)に開催されました。
来年の公式発表はまだですが、予定通り開催されるとしたら、2026年12月5日(土)ということになりますね。
絶対行きたい!という方は、早めにドレスデンのホテルをおさえておくことをおすすめします。(日程が近づくほど予約がとりづらい&高いので)

シュトレン祭りの見どころ

それでは、先日開催されたシュトレンフェストの様子をお伝えしていきましょう。

会場となるのは、ドレスデン中心地のクルトゥーアパラスト前の広場。クリスマスマーケットが開催されているアルトマルクト広場の向かいに位置します。

シュトレン祭りが開幕!中央の女性が2025年のミスシュトレン

午前10時、特設ステージで開会式がスタートしました。

壇上にはドレスデンシュトレン保護協会の方やミスシュトレンが登場し、トークを繰り広げます。ミスシュトレンは、ドレスデンのシュトレンを愛し深い知識を持つパン・菓子職人や販売員などから毎年選ばれ、一年間アンバサダーとして活躍します。2025年のミスシュトレンに選ばれたのは、職人見習い中の17歳のJohanna Worm さん。

会場にはパレードに参加する方たちが集い、談笑したり、写真を撮りあったりして和やかな雰囲気が漂っています。そのなかに、私が3年前にシュトレン作りを習ったミヒャエル親方の姿を発見!嬉しくてみんなで記念撮影しました。

>>シュトレン作りに挑戦したドレスデンの記事はこちら

巨大シュトレンが登場!2025年の重さは約2.1トン!

そして、お祭りの主役ともいえる巨大シュトレンの登場です!
2025年のシュトレンの重さはおよそ2.1トン!長さは2.8 m、高さ 92cmという大きさ。

この巨大シュトレンは、ドレスデン中の職人さんたちが手分けして焼いた約500gずつのピースを組み立てて作られたもので、パレード終了後に巨大なナイフで切り分けて販売されます。今年は約3300個ものピースが使われたそうです。

鼓笛隊の音楽にのって旧市街をパレード

11時、いよいよパレードの始まり!

巨大シュトレンを筆頭に、アウグスト強王と彼が巨大シュトレン作りを命じた宮廷パン職人ザカリアス、王に招かれた貴族や軍人などに扮した人々、ドイツで縁起が良いとされる煙突掃除人たち、パン職人チームなどが、マーチングバンドの演奏とともに旧市街を練り歩きます。

1730年の式典に招かれたゲストに扮した人々

王宮や君主の行列、フラウエン教会など、歴史あるバロック様式建築物が立ち並ぶ、ふだんでもタイムスリップ感満載の旧市街を舞台に繰り広げられる、歴史絵巻のような大パレードは圧巻!

右は君主の行列、奥に見える黄色い屋根はフラウエン教会

約1時間後、パレードが会場に戻ってくると、いよいよ巨大シュトレンが切り分けられます。

1730年に使われた巨大なナイフのレプリカで入刀式

1730年の式典でアウグスト王が作らせた巨大ナイフのレプリカで入刀式が行われた後は、職人さんたちがふつうのナイフを使ってどんどん切り分けながら販売。

どんどん切り分けられ売れていくシュトレン

1ピース500gで10ユーロとわりとお手頃で、縁起物(これを食べると翌年幸運がやってくるそう)ということもあり、飛ぶように売れていきます。

がんばってゲットしたシュトレン。ドライフルーツとナッツの密度がすごい!

押し合いへし合いのおしくらまんじゅう状態をくぐり抜けて、なんとかゲットできた特別なシュトレン。もったいなくてまだ一切れしか食べていないのですが、ドライフルーツとナッツがぎっしり入っていてとってもおいしい!少しずついただいて、味の変化を楽しみたいと思います。

アウグスト強王(右)と宮廷パン職人ザカリアス(に扮した人)

巨大シュトレンに壮大な歴史絵巻パレードにシュトレン争奪戦……何もかもが規格外で圧倒されたシュトレン祭りが終了。
これが約500年前に実際にこの街で行われた史実(シュトレン争奪戦はなかっただろうけれど)だということに驚愕するとともに、あらためて彼、アウグスト強王の権力の凄まじさを思いました。

とにもかくにも、ドレスデンには特別な、とびきりおいしいシュトレンがあります。
歴史がつまったひときれを、ぜひ味わってみてください。


次回はあの街から、クリスマスマーケットの様子をお伝えします。(年内公開予定)

■ドレスデンのシュトレンフェスト公式ホームページ

著者紹介

坪井由美子

日本では「食」に関する仕事に従事。商品開発やリサーチ、テレビ・ラジオへの情報提供及び出演、執筆などに携わる。テレビ東京『テレビチャンピオン・甘味王選手権』で3度優勝するなど食いしん坊ぶりを発揮。2003年よりドイツに拠点を移しフリーライターとして活動。旅や食文化、最新トレンドなどリアルなドイツ事情を新聞、雑誌、ウェブメディアで発信。 総合情報サイト「オールアバウト」ドイツガイド担当 / ドイツ発フリーペーパー「ドイツ・ニュースダイジェスト」で『食いしん坊のための簡単おいしいレシピ ~Locker! & Lecker!~』連載中/2020年秋『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)出版

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