10歳で進路選択。ドイツの教育制度
ドイツで何度かお会いしたことのある義理の母の友人Sさん。
Sさんは、ドイツで20年以上学校の先生を続けており、現在も現役で活躍されています。
ドイツに住んでいた頃、彼女のお家に遊びに行ったことがありました。手作りのフラムクーヘンでもてなしてくれ、とても気さくな方です。旦那さんは広い葡萄畑を持っていて、私たちは収穫を手伝い、まだ小さかった長男はトラクターに乗せてもらって大喜びでした。
先日、Sさんとテレビ電話で話す機会があり、ドイツの学校事情についていろいろと聞かせてもらうことができました。彼女から聞いたお話は、またあらためてご紹介したいと思います。
その前に・・・、まずはドイツと日本の小学校制度の違いについて、整理しておきたいと思います。
ドイツの教育制度
まず、ざっくりドイツの小学校の制度を表にするとこのような流れになります。
(一番右の「Alter」は年齢)

日本でいう「小学校」はドイツ語で「Grundschule(グルンドシューレ)」といいます。
「Grundschule(グルンドシューレ)」は上の表にあるように4年生まで。
日本では
・小学校1〜6年生
・中学校1〜3年生
・高校 1〜3年生
といったように表現しますが、
ドイツでは小学校1年生から高校3年生までを
・Klasse 1〜13
というように、1から13までの数字で呼びます。
ドイツ人と会話をしていて「娘が9月から9. Klasse.で〜」と言われた時「ええと、9年生だから・・・日本でいう中学3年生か」と、ドイツの数え方に慣れていない私は、今だに頭の中で変換作業をしなくてはいけません。
逆に、例えば「今うちの子は中学1年生だよ」とドイツ人に伝えるときは「中学校」にあたる単語がないため、「7. Klasse.」という言葉を使つかわなくてはいけません。
また、ドイツの学校制度は、16の全連邦州がそれぞれ独自の権限を持っています。
そのため、カリキュラムや進学の仕組みは州によって異なりますが、一般的には上の表のように進学するのが基本。例えば、ベルリンなどは基礎学校(小学校)が4年ではなく6年間となっています。
10歳で進路選択
小学4年生(4. Klasse)になると、今後自分がどの進路へ進むのか考えなければいけません。本人のやりたいこと、親の意見、先生の推薦状の有無や、成績などを考慮して決めます。小学5年生(5. Klasse)からの進路先は以下のように分けられます。
・ギムナジウム(Gymnasium)
大学進学を目指す。9年間(5〜13年生)修了後にアビトゥアを取得。
・レアルシューレ(Realschule)
事務・技術系の中級職を目指す。6年間(5〜10年生)。
・ハウプトシューレ(Hauptschule)
職人・技能系の職業訓練を目指す。5年間(5〜9年生)。
・ゲザムトシューレ(Gesamtschule)
上記3つを統合した総合制学校。進路を柔軟に変えやすい。
ギムナジウムの子たちは、最終学年に人生の大きなイベントの一つ、「アビトゥア」があります。アビトゥア(Abitur)とは「大学に入れる資格」を証明する卒業試験・資格。アビトゥア(Abitur)に合格すると、その「アビトゥアの点数」+「ギムナジウムの成績」により、進学することのできる大学の中から選択することとなります。また、ゲザムトシューレ(Gesamtschule)からも「アビトゥア」受けることができます。
親としては、やはりギムナジウムまたはゲザムトシューレに進学してほしいと思う家庭が多いでしょう。
ただし、ギムナジウムへの入学には一定水準の成績が求められ、それまでの学業に問題がなければ先生から推薦(Empfehlung)をもらえます。
しかし、推薦の扱いも州によって異なります。先生の推薦が拘束力を持つ州もあれば、親の希望があれば推薦なしでも入学できる州もあります。ただし後者の場合、入学後に試用期間(Probezeit)が設けられており、成績が基準に達しなければ転校を余儀なくされることもあるため、注意が必要です。
「小学4年生で進路選択なんて早すぎじゃない?」
初めてこの制度を知った時の、私の率直な感想でした。
Sさんに話を聞いてみると、Orientierungsstufe(オリエンティールングスシュトゥーフェ)という期間が一応あるらしい。
このOrientierungsstufeは、小学5年生・6年生、つまり進路選択後の二年間の期間のことで、この間は子どもたちが小学校から上級学校へとスムーズに移行できるよう、サポートに重点を置いた期間とされています。
新しい学校環境に慣れ、授業のペースや人間関係を築きながら、自分の進路が本当に合っているかを見極める時間でもあります。万が一「やっぱり違う学校のほうが合っているかも」と感じた場合でも、この時期であれば進路の変更がしやすいというメリットもあります。ただ、他の進路先からギムナジウムへの変更は成績や条件が厳しく、希望すれば簡単に変更ができるというわけでもないそうです。
このOrientierungsstufeも全ての州が取り入れているわけではなく、州によって制度の有無や呼び方も異なります。国内でも、州によってこれだけ制度が違うと、州をまたいで引越し・転校になった場合はさぞ大変だろうと思います・・・。
また、先ほどの
「小学4年生で進路選択なんて早すぎじゃない?」
というのはドイツ国内でも批判が多く、
近年では先ほど紹介した「ゲザムトシューレ(Gesamtschule)」の人気が高くなっています。しかし、ゲザムトシューレはまだ数が十分でなく、希望しても入れないケースも少なくありません。人気が高い学校では定員を大幅に上回る申込みが殺到し、抽選で入学者を決めるところもあるほど。
こちらはドイツのケルンについての記事ですが、市内19校の市立ゲザムトシューレが用意した入学枠は合計2808でしたが、申込件数は3265件に上り、実際に受け入れられたのは2598人。667人の子どもたちが希望するゲザムトシューレへの入学枠を得られなかったことになります。
Tag der offenen Tür
ドイツでは進路を決める子どもたちのために、多くの学校が「Tag der offenen Tür(タークデアオフェネントゥーア:直訳 開かれた扉の日)」という学校説明会の日を設けます。この日は、4年生の子どもと保護者が候補の学校を見学しに行く機会です。
ドイツ人の夫も、小学4年生の時に母親といくつかの学校を訪問し、その学校の雰囲気を見た上で自分の成績も考慮し、一つの学校(ギムナジウム(Gymnasium))を選んだそうです。
勉強の好き嫌いや得意不得意はもちろん人それぞれですが、6〜9歳の時点で勉強が嫌いであっても、もう少し大きくなってから勉強に火がつくタイプの子もたくさんいるのではないでしょうか。というか……多くの子がそうなのではないかと、個人的には感じます。
早い年齢から自分の進路や将来について考え、選択することには長所もあると思います。それでも、小学4年生という年齢はやはり少し早いのではないか、というのが正直な印象です。もちろん、こうした点はドイツでも常に批判や議論の的になっています。
また、ドイツの教育システムについて話すとき、「ドイツの」と一口に言っても州によって異なるケースが多く、とても複雑。日本では大学入学のための共通テストが全国同一の問題・日程・時間で実施されますが、前述のアビトゥア(Abitur)は各州の教育省が独自に問題を作成・管理するため、州によって難易度に差があります。
こうした問題を解決するために、こちらの記事にあるように、2017年から全州が利用できる共通問題プール(IQB Aufgabenpool)が導入されました。ただし、プールの問題を使うかどうかは各州の判断に委ねられており、取り出した問題を改変する州もあるそうです。
国内で議論が続いている少し複雑なドイツの教育制度。いかがでしたか?
次回は、Sさんから伺ったお話をご紹介したいと思います!