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テアタートレッフェン2026を訪れて②

ベルリン国際演劇祭に参加された沢田侑穂さん(株式会社パルコ 演劇事業部で舞台制作に携わる)の
ブログを3回に分けてお届けします!今回は第二弾!

※第一回はこちらからご覧ください

テアタートレッフェン滞在中は、選出作品5作品を観劇しました。

最初に観劇したのは、日本でもたびたび上演されるアメリカ演劇を代表する劇作家テネシー・ウィリアムズの名作『ガラスの動物園』を1990年イギリス生まれの若き演出家Jaz Woodcock-Stewart(ジャズ・ウッドコック=スチュワート)氏が演出を務め、現代的な視点で新たに立ち上げた、『Die Glasmenagerie』。舞台上でひときわ目を引いたのが、劇中にたびたび登場する「振動マシン」。家庭用の健康器具などとして見かける、乗ると身体がブルブルと振動するあのマシンです。
登場人物たちはその上に立ちながら会話をし、ときには身体を震わせながら物語が進んでいきます。
1940年代に書かれ、日本でもよく知られた『ガラスの動物園』が、見慣れた健康器具ひとつによって、こんなにも違った感覚をもつ作品になる。その大胆な発想に、テアタートレッフェン最初の観劇から驚かされました。

写真:劇場内に掲出された『ガラスの動物園』の作品紹介

続いて、1883年に創設された名門公共劇場であるDeutsches Theater Berlin(ドイツ座)でベルリン在住の演出家Jan Bosse(ヤン・ボッセ)氏が演出を務めた、オーストリア生まれのユダヤ人作家Anna Gmeyner(アンナ・グマイナー)の戯曲『Automatenbüffet』(自動販売機ビュッフェ)を観劇。まるでサーカス小屋のような華やかな舞台美術。舞台そのものが回転しながら次々と景色を変え、登場人物たちの世界を見せていく仕掛けに目を奪われました。

写真:『Automatenbüffet』プログラムとチケット

また、20世紀を代表するドイツの劇作家・演出家・詩人ベルトルト・ブレヒトと、俳優で妻のヘレーネ・ヴァイゲルによって創設されたBerliner Ensemble(ベルリナー・アンサンブル)では、『Fräulein Else(令嬢エルセ)』を観劇しました。オーストリアの作家Arthur Schnitzler(アルトゥル・シュニッツラー)が1924年に発表した
同名小説を原作に、オーストリアのVolkstheater Wienが製作した作品です。演出はLeonie Böhm(レオニー・ベーム)氏。Julia Riedler(ユーリア・リートラー)氏が、舞台上だけでなく客席を縦横無尽に動き回り、時には観客と言葉を交わしながら物語が進んでいく、90分間の斬新なひとり芝居でした。

Belle Santos(ベル・サントス)氏による舞台美術も印象的で、まるで水を張ったかのように見える舞台の上には、3つのシャンデリアが高さを違えて吊られ、ゆらゆらと揺れる幻想的な空間が広がっていました。

そしてラストには、日本の舞台ではなかなか目にすることのない、裸体にも見える大胆な姿で登場する場面も。
クラシカルな劇場空間や、事前に目にしていた作品のビジュアルイメージからは想像もつかない、自由で大胆な表現の数々が、強く印象に残りました。

『令嬢エルセ』プログラムとチケット

『令嬢エルセ』を上演したベルリナーアンサンブル正面入り口

『令嬢エルセ』を上演したベルリナーアンサンブル劇場の外観

ドイツ・ベルリンを代表する現代劇の拠点Schaubühne(シャウビューネ)では、17世紀フランスを代表する劇作家モリエールの『Der Geizige』(守銭奴)を観劇しました。演出は、2000年に31歳の若さで同劇場の芸術監督に就任したThomas Ostermeier(トーマス・オスターマイアー)氏。

物語の舞台は17世紀パリから現代ドイツの自動車販売店へと大胆に置き換えられ、某有名ハンバーガーチェーンのテイクアウトが登場するなど、古典作品とは思えないほど身近で現代的な世界が広がります。テンポのよい展開と、俳優陣の圧倒的な演技力、絶妙な間の取り方に引き込まれ、ドイツ語が十分に理解できなくても、エンターテインメントとして存分に楽しむことができました。

夜のシャウビューネ外観と当日観劇した『守銭奴』プログラム

シャウビューネ外観壁面に掲出されたHeute(本日の公演)『守銭奴』の舞台写真

シャウビューネにて、『守銭奴』観劇前の一杯

そして最終日は、ゲーテと並ぶドイツ古典主義を代表する劇作家フリードリヒ・シラーの『ヴァレンシュタイン』を大胆に再構成した『Wallenstein』。1982年生まれの舞台演出家・映画監督Jan-Christoph Gockel(ヤン=クリストフ・ゴッケル)氏の演出で、上演時間はなんと約7時間!

冒頭から舞台上では実際に料理が始まり、およそ30分間ライブカメラでその様子を映しながら進み、観客の中から選ばれた人たちが舞台上で約60分間のディナータイム。食事が終わると生朗読へ、さらに次の幕間には舞台上にバンドセットが組まれ、生演奏とともに観客もステージに上がって、劇場はまるでクラブのような空間に変貌します。

さらに出演者がライブカメラとともに劇場の外へ飛び出したかと思えば、客席へ戻って観客の間を練り歩く場面も。食事、朗読、ライブ、ダンス、そして劇場の外まで――「次は何が起こるの?」という驚きの連続。7時間という長さだけでなく、奇想天外な演出にも圧倒された、今回のベルリン滞在を締めくくる超大作でした。

『ヴァレンシュタイン』ポスター

ベルリナー・フェストシュピーレ(ベルリン芸術祭)会場のバーにて。
売れ行き好調、残り1個となったプレッツェル。

5作品は、時代も作家も上演スタイルもまったく異なります。それでも共通して感じたのは、古典や過去の作品をそのまま再現するのではなく、「この作品を、なぜ今上演するのか」という問いから、現代の観客へとつなぎ直していることでした。

振動マシンが登場する『ガラスの動物園』、現代の自動車販売店を舞台にした『守銭奴』、食事やライブ、ダンスまで飛び出した『Wallenstein』。100年前、数百年前に書かれた作品も、アイデアひとつで驚くほど新鮮な舞台になる。

ベルリンでの観劇を通して、古典を「残す」だけでなく、今を生きる観客のために更新していく演劇の面白さを改めて感じました。

次回は、劇場で過ごした時間や交流を通して感じた、ベルリンの劇場文化の魅力をご紹介します。

著者紹介

大使館スタッフ

ドイツ大使館 広報部の職員による投稿です。 こちらもよろしく! Twitter: @GermanyinJapan Facebook: @GermanyInJapan Website: ドイツ大使館 今週のドイツ語が本になりました!→「ドイツのことば図鑑」

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