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有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方

だいぶ冷え込んできましたね。今年は長過ぎる夏がようやく終わったかと思ったら、なんだかイキナリ冬になったような気分です。

さて、今年の夏に書き続けていた本が出来上がりました。「ドイツ人の戦略的休み方」(大和出版)といいます。現在、好評(?)発売中です!皆さん、ぜひ手に取ってみてください。

写真は、先週、出版社から送られてきた見本です。まだビニールに入っている状態で、開ける時にワクワクしました。

物書きとしては、長い長い苦労の末、本が出来上がり、出版社から本が送られてくるこの瞬間が一番幸せを感じる時です。

さて、自分語りが長くなってしまいましたが、この本の内容は、簡単に言うと「効率よく働くためには、たっぷり休まなければいけない」というものです!

ドイツの法律では、週休1日の人は年間24日の有休があり、週休2日の人には20日間の有休を与えることが義務づけられています。でも、ドイツ人はみんな週末が大好き、そして長い休暇が大好き。だから実質上、週休2日がデフォルトになっており、多くの企業や機関が従業員に年間30日の有休を与えています。上司も部下も「年間30日の有休」を全て消化します。有休をとらない人がいると「いついつまでに有休をとってください」と上司や人事部から催促されることもあります。

心身ともに健康でいるには「それなりの長いお休みが必要」というのがドイツ人の考え方。人間は機械ではないので、お休みに入っても、「完全にスイッチオフ」の状態になるまでには時間がかかります。何日もかけて疲れをとってから、自分の好きなことに集中(サイクリングだったり、登山だったり、マリンスポーツだったり)し、「仕事なんか完全に忘れちゃった」というモードになるまで休暇を楽しむことが一番良い形だとされています。

ところで、日本に住んでいると「長い休みをもらっても、何をすればわからない」という発言をしばしば聞くことがあります。「何日も休みが続いても、何をしていいのかわからない」という感覚を持つ人がいるのは、休みというものを「プラスアルファ」だととらえているからだと思います。

仕事だって、そうでしょう。

もしも「仕事をしてもいい。でも仕事をしなくてもいい」と言われ、仕事というもの が「プラスアルファ」の存在に成り下がったら、「なんの仕事をしたらいいのかわからない」「そもそも、どうして仕事をしなきゃいけないの?」と思うことでしょう。

でも一般的に仕事とは「やらなければいけないこと」です。

誰もが「仕事は義務」ととらえている中で、各自が一生懸命に仕事をし、それぞれ 模索していく中で、仕事の「やりがい」を感じるようになるのです。

 そして「休み」に関しても、同じです。

ドイツのように「休むこと」が「義務」で、1年に 30 日間必ず休まなければいけな い状況になると、定期的にそのルーティンを繰り返すわけですから、休み中の過ごし方について失敗したり、工夫したりする中で、長い目で必ず「休み上手」になります。

このように書くと「ドイツ人は休んでばかり」のように思われるかもしれませんが…ドイツのGDPは一昨年2023年に日本を追い抜きました。休んだ後は仕事の効率も上がりますし、長い休みを前に「仕事を効率的に片づけよう」という気持ちにもなりやすいです。

・・・・・あれっ?どこからか「それはドイツの話。日本ではできっこない」「サンドラのお得意の「ドイツでは~」が始まった」という声が聞こえてくるような・・・。

はい、この本は「出羽守」(デワノカミ)本です。ですから、「ドイツでは、ドイツでは」という話が沢山登場します。

日独にルーツを持つ者としては常にドイツと日本を比べながら「ああでもない、こうでもない」と考え、それを時に発信していくのが私の性、いえ、宿命のようなものですので、どうかお付き合いください。

ところで、女性として思うのは、本の中に書かせていただいたように、「有休」のほかに「ホームオフィス」や「週休3日制」など、個人のニーズに会社が合わせていかないと、日本が長年夢見ている「女性活躍」は難しいのではないかということです。逆にいうと、男女ともにフレキシブルな働き方をすることが女性活躍につながります。

「ドイツ人は有休30日を全部消化する」なんて話をすると・・・・・

「日本では100%有休を取るなんて難しい」「頑張って働いているのに、ドイツ人のように休むことなんてできるわけがない」「これ以上休むと、仕事量が減って、収入に響いてしまう」

などといった意見を聞くことがあります。

でも「色んな働き方や休み方がある」と知っておいて損はないと思います!

日本もドイツも先進国であり、世界のほかの国と比べて貧富の差が少なく、中間層が多い国です。

ドイツにできることは日本にだってできます。

私はそう思います。

・・・・なんだかアツくなってしまいましたが、ドイツに住んでいる会社員を複数取材し、彼らの話を「ドイツ人の戦略的休み方」にまとめましたので、是非手に取っていただけると嬉しいです。

サンドラ・ヘフェリン

著者紹介

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

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