親はドイツ 子供は日本 地球の反対側で親が亡くなるということ
なんでもそうですけど、自分自身が当事者になってみないと「実感として分からないこと」って沢山ありますね。
弟と私(二人とも日独ハーフ)は二人とも日本に住んでいますが、ドイツで長年一人暮らしをしていた母が亡くなって「はじめて知る」ことばかりです。
たとえば、人が亡くなった時の「死因」について。
著名人が亡くなると、メディアで「〇〇氏、●●(←病名や死因)で死亡」と報じられることがあります。今まで私も「人が死んだら、死因は当たり前のように分かるもの」だと思っていました。
でも実際には違いました。母はドイツで亡くなったのですが、亡くなった場所は自宅のトイレでした。その日は日曜日でした。母は毎週、日曜日に近所に住む女性Sさんと電話で話すのが恒例だったのですが、その日、母からの電話がないことを不審に思ったSさんが母の郵便受けを見に行き、その日の新聞が入ったままになっていることを確認。Sさんはその日のうちに「様子を見てきてほしい」と警察に通報しました。その際、Sさんは「何かあった時のために」と母から預かっていた鍵を警察に渡しています。
母は亡くなったとみられるその日のうちに家の中に入った警察によって発見されました。警察は「事件性はない」と判断。つまり犯罪の被害などに遭ったわけではないということです。その場合、ドイツでは基本的に死体解剖(検視)はしません。遺族が希望すれば有料で検視が可能ですが、かなり詳細に「検視を依頼する理由」を書かされます。弟と私には、母親の違う姉と兄がいます。兄は2012年に自宅で亡くなったのですが、姉が死因を知りたいと思い、検視を依頼しようと思ったところ、「相当な理由がないと難しい」と担当の人に言われたそうです。そこで姉は「自分に子供が二人いるため、病気や遺伝のことを考慮し検視をお願いしたい」という内容のことを詳細に書類に書き検視ができたとのことです。
母がドイツで死亡した後、日本にいる弟と私にそのことが伝わるまでに実は「5日間のタイムラグ」がありました。前述のように、近所の女性Sさんが警察に通報し、その日のうちに警察は家で亡くなっている母を発見しました。でもSさんは家族ではないので、個人情報の関係で警察から「母がどうなったか」を教えてもらえなかったのです。そして警察は日本にいる弟と私の連絡先を知らなかったため、弟にも私にも連絡できませんでした。
月曜日、火曜日、水曜日・・・と母と電話がつながらないことを心配した弟と私がミュンヘンに住む姉にお願いして、警察に電話をしてもらうことに。姉は家族ということで、警察に母の死亡を教えてもらったのです。弟と私はミュンヘンに住む姉から母の死を知らされました。
そんな状況でしたから、母の死を知った時、既に時間が経過していました。弟も私も混乱していたこともあり、検視の依頼はしませんでした。もちろん具体的に何が原因で母が亡くなったかを知りたい気持ちはあります。でも知ったところで悲しみが癒えるとも思えません。弟とは「死因を知ったところで、お母さんは生き返らないよね・・・」なんて話をしました。
母が亡くなり、混乱しているなか、ミュンヘンに住む姉には何かと助けられました。警察への連絡などの実務的なこともそうですが、弟と私の相談にのってくれ、精神的な支えになってくれました。姉は医療関係者ですが、「その場にいなかったから断定できないけど」と前置きしつつ「お母さんは高血圧だったから心臓の問題かもしれないし、高血圧による脳卒中かもしれない。高齢者で免疫が弱っている場合、胃腸炎を悪化させて死にいたることもある」と色んな可能性を教えてくれました。
なにはともあれ、そんな状況でしたので、日本に住む親戚に「お母さんは何で(死因のこと)亡くなったの?」と聞かれましたが、「死因は分からない」のです。
・・・それでも母との思い出が消えるわけではありません。「母との色んな思い出があるのだから死因は別にいいんじゃないか・・・・?」今はそんな思いでいます。
それにしても、今回、日本とドイツの両方の国で色んな人の優しさに助けられました。次回はそんな話について書きます。
サンドラ・ヘフェリン