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ドイツ映画「白パンと独裁者」上映中

ドイツ映画「白パンと独裁者」がただいま日本で上映中です。

監督はファティ・アキン(「女は二度決断する」「ソウル・キッチン」)、脚本はファティ・アキンとハーク・ボームです。

映画の内容はハーク・ボームが幼少期に実際に体験したものです。

私もさっそく映画を観てきましたが、内容をバラし過ぎない程度に感想を書こうと思います。(←これが、なかなか難しかったりするんですよね…。)

時代は戦争末期の1945年。終戦の前の数週間の出来事を主人公の12歳の青年ナニングの目線で描いています。

第二次世界大戦の末期、ナニングは兄弟、母親、叔母とともに「本土のハンブルグ」から「ドイツ北部にある北フリジア諸島に属しているアムルム島」に疎開します。

ナニングは、戦地から戻らない父親に代わり、アムルム島で農作業をしながら妊娠中の母親を支えます。

母親はヒトラーに心酔。ヒトラーが死亡すると、母親は心身ともに崩壊し、食事を拒むようになります。

そんななか、母親が唯一欲したのは「バターと蜂蜜が塗られた白パン」でした。母親のためにナニングは白パンを求めて島中を奔走します。

家族の「愛」、そして家族の「闇」。映画のなかでは、その両方が浮き彫りになります。「家族の闇」の部分は「ドイツ人の戦争責任」とも関連する内容です。ドイツで育った私としては深く考えさせられました。

女性として、映画を通して「ジェンダー」の面についても、色々と考えさせられます。ナチス時代のドイツは、今のドイツでは考えられないほど男尊女卑でした。あの時代、女性がどう扱われていたかはここでは割愛したいと思いますが、ナニングのような男の子に対しては当然「男の子は男の子らしく!」という教育が当たり前でした。ナニングが悲しさのあまり大泣きすると、母親は「あんたみたいな、すぐに泣く弱虫がいるからドイツは戦争に負けたのよ!」と息子を叱ります。「男の子は(戦争に行くために)強く育てる」「男の子は泣いてはいけない」というあの時代の価値観に基づいた𠮟り方です。

今の時代、日本やドイツを含む先進国では「女の子なんだから●●しなさい」「男の子なんだから、泣くのをやめなさい」というような教育は「よろしくない教育だ」という共通認識があるように思います。子供に対して「性別に基づく役割の押し付けをすることは問題である」という感覚を持つ人が増えました。

・・・ジェンダーの面においても、「今の時代に生きることができて本当に良かった」映画を観ながら、心の底からそう思いました。

映画の見どころのひとつは「アムルム島の美しい自然」だと思います。そして「自然とともに生きる島の人のたくましさ」です。「本土」であるハンブルグで育ったナニングはそれまで「都会の子」として生活してきましたが、アムルム島では島の人に「野ウサギの捌き方」を習います。そのシーンを皆さんもぜひ注目して見てみてください。

私にとって「初めて知るドイツ語」もありました。それは島の子供達がナニングに対して発した「Festländer!」という言葉。日本語に訳すと「本土人!」です。ナニングには島に一人、とても良くしてくれる親友がいますが、全員が受け入れてくれるわけではありません。島の学校の子供達からは「本土人!」と言われてしまいます。南ドイツはバイエルン州で育った私は正直、初めて聞く言葉でした。

・・・「本土人」、島の人、シレジアや東プロイセンからの難民、ヒトラーに反対する人、ヒトラーに心酔する人・・・映画に登場する人はそれぞれ立場が違います。主人公の12歳の少年・ナニングを通して「立場の違う人、思想の違う人、つまりは味方ではない人と、どのようにかかわっていけばいいのか」というヒントが見えてきます。


ドイツ育ちの私ではありますが、しつこいようですが、私は「南ドイツ、バイエルン州のミュンヘン」で育っています。いわゆる内陸で、伝統的に豚肉をよく食し、海からは遠く、漁をする人はあまりいません。南ドイツが戦時中も総じて保守的だったのに対し、映画を通してみる「島の人」(アムルム島の人々)は全体的にリベラルな感じがしました。

映画を見終えてから調べたところ、アムルム島からは既に19世紀、多くの人がアメリカ合衆国に移民していることを知りました。1867年から1870年にかけては、なんと島人の4分の1がアメリカに移民しました。映画にも「アメリカと戦争中にもかかわらず、実はアメリカが好きなアムルム島の人」が出てきます。こっそりアメリカのラジオを聞いたり、アメリカの写真を愛おしそうに眺めたり。考えてみれば、1945年のこの時点で、島の人には既に70年も前から「アメリカに行って幸せに暮らしている家族や親戚」が沢山いるわけで…そう考えると、ナチス時代にもかかわらず、島の人の雰囲気がなんだかリベラルだったのも頷けます。

同じドイツでも、デンマークに近い北のほうのドイツの島(アムルム島)VS オーストリアのアルプスが近い私が育った南ドイツはバイエルン州では「方言も食生活も文化もまるで違う」ことを映画を通して知ることができました。いつの日かアムルム島に行ってみたいです。

・・・というわけで、「白パンと独裁者」ただいま日本で上映中ですので、皆さんもぜひ映画館に足を運んでみてください。

93分/1:1,85/2025/ドイツ語/ドイツ/原題:AMRUM 

配給:ビターズ・エンド 日本語字幕:吉川美奈子

© 2025 Bombero International Gmbh & Co. Kg

サンドラ・ヘフェリン


#白パンと独裁者

#8月7日に公開 

#ただいま上映中

著者紹介

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

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