現役教師にきいた、ドイツの学校の色々
先日、義理の母の友人のSさんに、ドイツの学校について話を聞かせてもらいました。
笑顔が素敵で優しいSさん。

Sさんは、Land Rheinland-Pfalz(ラインラント=プファルツ州)在住。
ドイツで約25年間教師をしています。現在は、ギムナジウム校で11・12・13年生(日本だと高校2年生からの3学年)を受け持っているそうです。

教えている教科は、ドイツ語、英語、倫理。 AG(アーゲー)では演劇を教えています。AG(アーゲー)とは、Arbeitsgemeinschaftの略でクラブ活動のことす。
[Sさんの学校の時間割]
8:00-9:30 授業
(15分 休憩)
9:45-11:15 授業
(15分 休憩)
11:30-13:00 授業
やはりドイツの学校は日本より1時間目が始まるのが早い!その分、終わる時間も早いですね。
この後は、AG(クラブ活動)に参加したり、外部のサッカークラブに行ったり、Nachmittagsbetreuung(ナハミッタークスペトロイウング)という校内での「放課後預かり」を利用する子や、家に帰って過ごす子など、さまざまな過ごし方があるようです。
また、英語・ドイツ語・数学で成績のよくない生徒は、1週間に一回この後Förderunterricht(補習授業)を受けるそうです。
学校に食堂はなく、あるのはピザなどを売っている小さな売店のみ。 給食などもないので、子どもたちは家からお昼ご飯を持ってきます。もしくは午前中の休憩時間に食べる簡単なものを持ってきて、お昼ご飯は家で食べる子もいます。また、9年生以上はお昼ご飯を買うために校外に出ることを許可されていて、パン屋やマックに行く子も多いそうです。
Sさんの学校では、水泳の授業は7年生になってから。でも学校にプールはないので近ければ歩いて行き、遠ければバスなどの公共交通機関を使って行くこともあるそうです。水泳の授業をするためにわざわざプールのある施設まで引率するなんて先生は大変ですね。
中には言語の問題があることも。
Sさん「ドイツの幼稚園は義務教育ではないの。通っている子がほとんどだけど、例えばトルコ系の家族のように、中には未就学の間ずっと自宅保育をしている家庭もある。でも母親があまりドイツ語が話せず、コミュニティもあるから子どもたちは小学校に入るまでドイツ語にあまり触れる機会がないの。そういう子が小学校に入ると、本人も教師も特に初めは本当に苦労するわ。」
ドイツの学校の成績の付け方についても教えてもらいました。
ドイツでは、成績の評価の約半分はテストの点数によるもの。残りの半分はプレゼンテーションや発表、または授業態度や授業中の発言の多さによるものだそう。「日本の学校では、授業中の発言は成績とは関係ないよ」と言うと、「私はそれはいいことだと思う」と言うSさん。
Sさん「教師にとっては、たくさんの生徒たちが授業に積極的に参加してくれることは嬉しいわ。でも、もちろん中には恥ずかしがり屋で、他の子たちと積極的に議論するのが難しい子もいる。どんなにその子が賢くても、良い成績がとれないのは少し残念だなと思う。」確かに、ドイツでは「自分の意見を主張する」ことは大切なことですが、それがとっても苦手な子にとってはそこを評価されるのはきっと大変!これは先生によっても考え方が分かれそうですね。
Sさんから見て、最近の子どもたちの悩みはなんだと思う?
Sさん「周りと自分を比べて、自分は他の子より劣っていると感じて悩んでいる子が本当に多いと感じる。それはSNSの影響がとても大きいと思う。他の子はあんなにキラキラしてるのに自分は・・・って。そしてやっぱりSNS中毒の子もとても多いわ。」とお話してくれました。特にSさんが受け持っている思春期真っ盛りの高校生たちは、SNSや携帯の影響をとても受けているようです。これは世界共通の悩みですね・・・。
教師として、やりがいを感じる時と大変なことは?
Sさん「やりがいを感じる時は子どもたちといい議論ができた時。それとAG(クラブ活動)でもそうだけど、子どもたちが成長したとき。大変というか・・・難しいなと思うことは、どんなに教師が一生懸命説明や問いかけをしても生徒が全くそれに興味を示してくれなくて、どうしたら興味を持ってくれるのかわからない時かもしれないわ。」
最近では日本でも「モンスターペアレンツ」という保護者が増えていると言われているので、ドイツでも苦情の多い保護者がいると感じるか聞いてみました。Sさんの受け持っている子たちはすでに17歳や18歳になっているため、あまり保護者の方と問題になることはないけれど、特に5年生や6年生の保護者はよく学校にきて担任と話をすることが多いそう。でもモンスターペアレンツというわけではなく、進路選択をして新しい環境に入ったばかりということもあり、5年生6年生の保護者は色々と先生に相談したいことが多いそうです。
学校でのスマホやタブレットのルールや問題点について。
Sさん「私が教えている学校では、携帯を学校に持ってくることはOK、でも先生の許可なしでは授業中に携帯を見ることは許されていないの。7年生からは、任意でタブレットを使用することを許可されていて、自分のタブレットを家から持ってくるか、学校から借りることができる。それはいま本当に問題になっていて・・・当たり前だけど、教師は生徒たち全員の全ての行動を把握することはできないわ。
実際、子どもたちは学校でAmazonで何かを購入することも、SNSを使うこともなんでもできるわ。クラスルームアプリで、生徒たちがタブレットで何をしているか見ることのできるようにはなっているけどあまりちゃんと機能していなくて・・・、だからといって教師がいつも生徒たちがタブレットで何をしているかずっと見張るわけにもいかないでしょ。SNSだけじゃないわ、写真を撮ったり動画を撮ってふざける子ももちろんいるし。
例えば、私が生徒たちに『今日はみんなタブレットをカバンに入れて授業するよー!』と言っても、『えええー!それは無理だよー!先生お願い、タブレットにノート取らなきゃいけないし。お願いー!!』とブーイングの嵐(笑)。『ダメダメ、今日はタブレットなしよー!』というやりとりをしなければいけないの。はあ・・・、これは本当に難しい問題・・・。今の子は、タブレットがあるから授業に集中することができないの。」
と話してくれました。学校で子どもたちがタブレットを使って、自由にSNSやオンラインショッピングができる状態だと知らなかったのでとても驚きました。これはSさんだけでなく多くの教師たちにとって、大きな問題になっているんだろうと思います。そしてあんなに若い頃から学校でタブレットやスマホに囲まれて生活している子どもたちも、(本人は大変という感覚はないとしても)大変だなあ・・・と昭和生まれの私は感じてしまいます。
前回でもお伝えしたように、ドイツでは4年生の時にどの学校へ進学するか決めなくてはいけません。11年生以上を受け持っているSさんには少し難しい質問だったかもしれませんが、小学4年生の子どもたちがどうやって進路選択をしているのかについても少しきいてみました。
担任の先生が、その子の成績を見て、例えば「この子はレアルシューレはどうですか」などの推薦をするそう。でも保護者や本人がもちろんそれと違う進路を選択してもよい。実際よくあるのは「仲良しの〇〇ちゃん/〇〇くんが行くから私/ぼくもそこに行きたい」というパターンだそう。とってもリアル(笑)。
Sさんは三人の娘さんがいるのですが、三人ともギムナジウムに行くのに十分な成績だったため、進路を決めるのは難しくなかったと教えてくれました。娘さんの友達の一人で、とても成績の良い賢い子が、Orientierungsstufe(小学5年生・6年生、つまり進路選択後の二年間の期間)を終えた後にリアルシューレに行くことを決めた時は、Sさんもとても不思議に思ったそうです。でも今はその子が幼稚園の先生になっていて、「それでよかったんだなと思っているわ」と話してくれました。
9年生から10年生(日本だと中学生から高校生)になるときに、ギムナジウムからレアルシューレ(Realschule)やベルーフスシューレ(Berufsschule)に切り替える生徒が多いとお話してくれました。理由は、大学入学資格を証明する卒業試験であるアビトゥアを受けたくなくて、このタイミングで学校を変える子が多いからだそうです。
ドイツの学校制度について、何を改善したらいいと思う?
Sさん「もっと教育に投資するべき。日本では学校に給食があるといったでしょ?それはとても大事なことだと思うの。そして子どもたちが自分でそれを準備することもとても良いことだと思う。そして多くの家庭が共働きをしている今、学校が13時に終わるというのは、今では非現実的よ。それと、ひとクラスの人数が多すぎるわ。一人の教師で約30人の生徒を見ることは本当に大変。何か問題があったときに対応できる学校のソーシャルワーカーや心理カウンセラーも足りてないわ」とお話してくれました。
今回、Sさんにドイツの学校について色々なことを教えてもらいました。特にタブレットの問題はとっても興味深かったです。子どもたちとスクリーンとの付き合い方は本当に難しい問題ですね・・・。まだまだ聞きたいことはたくさんあります!ぜひまたお話を聞かせていただけると嬉しいです。