ベルリンのクラフトビール巡り
「ドイツのビール」と聞いて多くの人の頭に浮かぶのは、バイエルンの伝統的なビアホールや、1516年に制定された「ビール純粋令」ではないでしょうか。もちろんそれもドイツ食文化の大きな魅力ですが、まったく異なる「ビールの今」に出会えるのが首都ベルリン。
近年、ベルリンでは国内外の若手醸造家たちが自由でクリエイティブな1杯を生み出し、ヨーロッパにおけるクラフトビールブームの中心地となっています。
今回は、人気醸造所が点在するWedding(ウェディング)地区で、個性が光るクラフトビールを飲み歩きます。
人気醸造所が集まるウェディング
ベルリン北西部に位置するウェディング地区は、かつて多くの労働者が暮らした町で、今もレンガ造りの工場や倉庫が残るエリア。洗練された観光地というよりも、無骨で飾らないローカルな雰囲気が漂っています。
近年はこの独特の空気感と手頃な家賃に惹かれたアーティストや起業家が集まり、文化的な多様性が増している注目の地域でもあります。
ウェディングの魅力は、古い建築を生かしながら、新しいカルチャーを溶け込ませている点。ビール醸造所も例外ではなく、古い建物の地下や工場跡地に醸造設備を据え、地域の人々のたまり場となっています。
エッシェンブロイ(Eschenbräu)

最初に訪れたのは、ウェディングの住宅街の地下にひっそりと佇む「Eschenbräu(エッシェンブロイ)」。2001年に創業したこの醸造所は、ベルリンにおけるマイクロブルワリー(小規模醸造所)のパイオニア的存在として知られています。
中庭から地下へ続く階段を下りると、そこに広がるのは薄暗くも温かみのあるアットホームな空間。大麦の香ばしい香りと、グラスを交わすローカルたちの賑やかな声が出迎えてくれます。

ここで味わいたいのは、定番のピルスや季節限定の「Alt-Berliner Dunkel」。無濾過ならではの濁りと、酵母由来のふくよかなコク。喉を通した後に広がる麦芽の自然な甘みは、機械的に大量生産されたビールとは一線を画します。
さらに、食べ物の持ち込みが自由という、ドイツの伝統的なビアガーデン・スタイルを踏襲している点も魅力。近所のベーカリーで買ったパンや自家製のおつまみを広げ、出来立ての生ビールを傾ける。地域に根ざした食文化のあたたかさを肌で感じられる場所です。
ヴァガブント(Vagabund)

エッシェンブロイの地域密着スタイルに対し、グローバルで革新的な風を吹き込んでいるのが「Vagabund(ヴァガブント)」。アメリカ出身の3人の友人がクラウドファンディングで資金を集め、小さなタップルームからスタートしたこの醸造所は、今やベルリンのクラフトビールシーンを語る上で欠かせない存在となりました。
元工場を活用した「Kesselhaus(ケッセルハウス)」の店舗は、高い天井と無骨なインテリアがインダストリアルなベルリンらしさを醸し出しています。

看板商品であるIPAシリーズは、柑橘類やトロピカルフルーツを思わせるホップの華やかな香りが鮮烈。爽やかな苦味が心地よく広がり、ビールに対する概念が軽やかに覆されます。タップルームのカウンター越しに醸造タンクが見える距離感も魅力です。
※2026年8月現在、工事のため店舗は休業しているようです。ご確認ください。
ビール&チキンの至福「チメク」をベルリンで楽しむ!

個性豊かなビールを存分に楽しんだ後、お腹を満たすために向かったのは、近所にある韓国フライドチキン店。ドイツでは空前の韓国カルチャーブームが巻き起こっており、ベルリンでも本格的な韓国料理店が増加中。連日多くの若い世代やローカル客で賑わっています。
ザクザクとした軽い衣にジューシーな肉、甘辛いヤンニョムソースが絡むチキンと、冷えたビール。このふたつが出会えば最高の組み合わせであることは言うまでもありません。ちなみに韓国では、チキンとビール(韓国語でメクチュ)を合わせた「チメク」という言葉があり、夜食やピクニックの定番でもあります。
ドイツの伝統的な醸造技術から生まれたビールと、アジアから届いた食トレンドをともに楽しむ。この雑多で自由なチャンプルー感こそ、今のベルリン食文化の醍醐味と言えます。
もちろん、伝統的なビアレストランやビアガーデンもたくさんあります。
この街で、新旧のビール文化を感じてみてください。